2023 Fiscal Year Research-status Report
地球温暖化による中部山岳亜高山帯二次林の動態および炭素貯留量の変動予測
Project/Area Number |
22K05744
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小林 元 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (40325494)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 土壌呼吸 / 従属栄養呼吸 / 根呼吸 / 標高勾配 / 温度感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林生態系における炭素排出の主要因の一つである土壌呼吸(Rs)は,従属栄養呼吸(Rh)と根呼吸(Ra)から構成される。RhとRaは呼吸の基質だけでなく温度感受性等の環境への応答もそれぞれ異なるため,土壌呼吸に対する温暖化の影響を予測するには,これらを個別に検討する必要がある。2023年の研究では,信州大学農学部附属西駒ステーションの亜高山帯常緑針葉樹林において土壌呼吸を構成するRhとRaが標高勾配による温度差に対してどのような応答を示すか明らかにすることを目的とした。標高2045m,2255m,2453mの3つの固定試験地(2000区,2200区,2400区)に根除去区と対照区を設け,呼吸速度の測定を7月~10月にかけて行った。Rhは根除去処理にて測定し,RaはRsとRhの差分として算出した。RsとRhのQ10は,それぞれ2.45~2.66と2.02~2.34の範囲にあり,標高による明瞭な傾向は見られなかった。RhとRaの基質となるリターフォール量と細根量にもまた,標高による明瞭な違いは見られなかった。対照的に温度を10℃に基準化した時の呼吸速度であるRs10,Rh10,R10aは,試験区の標高が高くなるにしたがって増加した。標高によるR10の増加は,Raが1.76倍と,Rhの1.12倍と比べて大きく,標高に伴うRs10の上昇は主にRa10の増加に起因すると言えた。このように温度変化に伴うRsの変化が主にRaの変化に影響されるという結果は,ブナ混交林におけるRsの季節変化(Ruehr and Buchmann, 2010)と一致する。高標高の試験区ほどRaが高くなる原因として,同化産物の細根への分配が高標高ほど多くなる可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
森林生態系における炭素排出の主要因の一つである土壌呼吸の構成要素である従属栄養呼吸と根呼吸の温度感受性が標高勾配によって形成される温度環境によって異なることを明らかにすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
根呼吸の基質となる同化産物の根系への分配が標高勾配によってどのように異なるか調べる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:調査を日帰りで行うことが多かったため,旅費の支出額が当初予算を下回ったことと,調査の一部を卒業論文として行ったため,謝金の支払いが生じなかったため。 使用計画:英語論文執筆のための校閲費に充てる。
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