2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒノキ、スギの葉と枝の組織分化を含有成分により追跡する
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22K05771
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
松井 直之 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80353853)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヒノキ / テルペン / リグニン / クロロフィル / 枝と葉の境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒノキの枝先における「葉」から「枝」への変化について、光合成色素量、リグニン含有量、精油(テルペン類)の組成という3つの観点からの評価を行った。クロロフィル濃度は葉のみならず枝先の緑色を呈する画分では高い濃度を示したが、組織表面に茶色の樹皮部分が生じる画分から先(幹方向)で明確な濃度の低下が見られた。リグニン量についてDFRC法により分析を行った結果、生成物量は枝先の緑色の画分ではわずかであったが、枝としての剛性を有するようになった画分で次第に増加が見られ、樹皮が完全に茶色となった画分にて1%以上の値で安定した。リグニン量を木化の指標とすれば、明確に枝先<移行部<枝の順に木化が進んでいると考えることができる。テルペン類の組成については、モノテルペン(サビネン等)、セスキテルペン(エレモール等)は枝先の葉の部位で最大量であり、枝元部分に移るに従って大きく減少する傾向が見られたのに対して、一部のジテルペン(フェルギノール等)は枝元の画分にのみ検出されるなど、部位によって特徴的な分布を示すことが明らかとなった。すなわち、クロロフィル量、テルペン組成の観点からは、枝表面に緑色が観察される部位までは「葉」とみなすことができ、枝表面が茶色の樹皮に完全に被覆された部位で「枝」と判断されるのに対して、リグニン量の観点では、表面が緑色でも剛性が見られる部分で既に「枝」化が進んでいると評価することができ、成分ごとに枝と葉の境界は異なる部位に存在すると見なすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒノキ枝先の試料を用いて当初予定の3種類の成分分析を行い、それぞれの成分の分布より部位の「枝」と「葉」の区別を3通りに示すことができた。研究の進展としてはおおむね順調ということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
新たにスギ枝先を試料として初年度と同様に光合成色素量、リグニン含有量、テルペン類の組成分析を進め、部位の「枝」と「葉」の区別を探るとともに、ヒノキ枝先について顕微鏡を用いた組織的な観察を行い、成分分布との関連について明らかにする。最終年度にはヒノキとスギの両試料に対し、春先、初夏、盛夏など、成分分布のパターンにさらに経時的な変動が生じうるかを検証する予定としている。針葉樹の枝先におけるダイナミックな成分分布を評価することにより、部位の外観上の変化と対比させた上で、ヒノキとスギの枝先で生じている葉と枝の役割の分化の様子を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究成果の国際学術誌への論文投稿を予定しているが、近年のオープンアクセス論文に対する投稿経費の高騰を鑑みて必要諸経費としての予算を次年度使用額として多めに保持した。
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