2022 Fiscal Year Research-status Report
ホオノキ主要ネオリグナン類のアリルフェノール構造に基づく新規機能性成分創製
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22K05773
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
河村 文郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80353655)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ホオノキ / ネオリグナン / アリルフェノール / キサンチンオキシダーゼ阻害作用 / ペルオキシダーゼ処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホオノキの主要ネオリグナンであるホノキオールは高い痛風抑制効果を示し、ネオリグナン類ではほとんど報告例のないアリル基がフェノールの芳香環に直接結合した独特な部分構造を有している。本研究では、C6-C3基本単位であるアリルフェノール、その類縁体及びネオリグナン類をオリゴマー化することによりホノキオール類似物質の調製を行い、化学構造と生物活性を明らかにすることを目的とした。 ホオノキ樹皮の主要ネオリグナンの構成単位である2-アリルフェノール(2-AP)及び4-アリルフェノール(4-AP)について、それぞれ単独あるいは混合して酵素(ペルオキシダーゼ)処理を行った。反応初期において、4-AP単独の反応では顕著な濁りが確認された。一方、2-AP単独の反応では濁りが生じなかった。このため、重合などの反応性が両者で大きく異なると推定された。2-APと4-APの混合物を反応させると、濁りに加え顕著な変色を示し、両基質の残存率が非常に低くなった。 ホオノキ樹皮の主要ネオリグナンであるホノキオール及びマグノロールについて酵素処理を行った結果、ホノキオールの方がマグノロールよりも基質残存率が低く、生成物の発生率は高かったため反応性が高いことが分かった。酵素処理の温度、酵素濃度、過酸化水素濃度、反応時間、溶液の有機溶媒率について検討した結果、25-30℃で生成物の量が多くなり、酵素濃度と過酸化水素濃度についてはこれらの比率が適正であることが必要であることが分かった。応時間については5秒から24時間まで実験を行った結果、30分以内に大部分の反応が終了することが分かった。 ホオノキ樹皮抽出物の酢酸エチル可溶部の酵素処理を行った結果、市販標品のホノキオールとマグノロールの混合物と同様の生成物が確認された。このため、今後、生成物の単離を目的とした反応において市販標品等の代替とすることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度以降に実験を予定していたホオノキ樹皮主要ネオリグナンの酵素反応の最適条件決定を前倒しして行った。さらに同様の実験をホオノキ樹皮抽出物の酢酸エチル可溶部を用いて行った結果、このフラクションの酵素処理を直接行ったときも標品(市販品または単離化合物等の純粋な化合物)を用いた場合と同様の生成物が得られることを明らかにした。この結果により、今後の生成物の分離・精製(単離)に向けて、高価な市販標品の購入や時間と労力を要する基質の単離なしで反応を行える目処がついた。一方、酵素処理における単量体のアリルフェノールの反応性は、二量体であるネオリグナンよりも悪いことが分かった。このため、反応条件の工夫や類縁体等との反応性の比較、あるいは類縁体との組み合わせによる酵素反応生成物の調製が必要である。以上のように、予定よりも進んでいる部分と遅れている部分が共存するため全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ホオノキ樹皮のネオリグナンの基本単位であるアリルフェノール(単量体)を基質とした酵素反応の参照情報を得ることを目的として、本化合物とは芳香環の置換パターンの異なるオイゲノールやo-オイゲノールなどの類縁体を用いた実験を行う。具体的には、これら類縁体の溶液にペルオキシダーゼ及び過酸化水素を添加して反応させた後、分液と濃縮乾固した試料の高速液体クロマトグラフィー分析を行う。また、同様の実験を側鎖二重結合が芳香環と共役したタイプのフェニルプロパノイド(2-ヒドロキシシンナムアルデヒド、p-ヒドロキシけい皮酸、コニフェリルアルコール等)を用いて行う。これらの実験結果を比較することによって、芳香環上の置換基の種類や配置の影響等アリルフェノール並びに関連化合物の反応性についての詳細な知見を得る。 芳香環の置換パターンの異なる類縁体や側鎖二重結合が芳香環と共役したタイプのフェニルプロパノイドとアリルフェノールを共存させ、同様の実験を行い、結果を比較する。特に反応性の低かった2-アリルフェノールと組み合わせて反応性を向上させることを試みる。 ホオノキ樹皮エタノール抽出物をn-ヘキサンと酢酸エチルで逐次処理して酢酸エチル可溶部を得る。酢酸エチル可溶部の酵素処理を大量に行い、反応生成物を高速液体クロマトグラフィー分析により確認し、小スケールで行ってきたこれまでの結果と比較し、必要に応じて条件の調整を行う。 大量に酵素処理した酢酸エチル可溶部から分取用カラムをセットした高速液体クロマトグラフィーを用いて生成物を分取する。分取したフラクションの分析を行い、得られた物質の純度等を確認する。同様の操作、精製を繰り返して生成物の単離を試みる。単離化合物について核磁気共鳴分光法(NMR)等の機器分析を行い、化学構造を決定あるいは推定する。化学構造の確定した生成物の生物活性を測定し、評価する。
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Causes of Carryover |
当年度は、研究の進捗状況に鑑み、クールスターラーを予定通り購入したことを除いて、複数の機器または器具の購入を見送った。また、注文した比較的高額な物品の中に製造中止のものがあり、代替品の注文が間に合わなかった。さらに、予定していた学会大会の参加を中止した。次年度は、国際学会参加や高速液体クロマトグラフィー用分取用カラムの購入などで大幅に支出が増加する予定である。
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