2022 Fiscal Year Research-status Report
繁殖確率の「ゆらぎ」に基づいた資源回復策:その雌と雄は本当に繁殖できるのか?
Project/Area Number |
22K05789
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
千葉 晋 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (00385501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 健児 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 室長 (40380290)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水産増殖 / 個体群管理 / 性比 / 繁殖成功 / タラバエビ / アマモ場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、水産資源の低密度化をきっかけとして雌雄の遭遇機会や繁殖タイミングが再生産効率に強く影響することを証明し、繁殖確率の変化に着眼した資源管理策と人為的な介助による増殖策を提示することである。本研究では、ホッカイエビ(商品名は北海しまえび)を対象とし、資源減少時におこる繁殖確率の低下を明らかにするために、(I)環境の異質性と雌雄の遭遇確率の推定、(II)繁殖ミスマッチの検証、さらに(III)長期的な野外データ解析での検証を行なう。その後、これらの結果を元にして(IV)資源回復策の提示、すなわち繁殖確率を取り入れた資源管理策と、人為的な介助によって繁殖確率を高める増殖策を具体的に示す。 2022年度は上記(I)~(III)の項目の一部を実施し、概ね当初計画通りに進行した。項目(I)については、3カ年計画のうち、初年度に予定していた調査等を全て実施した。野外調査では、各定点における生息環境(アマモ場の分断状況や水温の変化等)を観察し、その場所において曳き網調査を行うことでホッカイエビの密度を調べた。また、標識放流を行うために、本年度は実験室内で標識手法の開発、および脱落状況等を調べた。標識脱落は無かったものの、装着時、および装着後におけるエビへのストレスが大きいことが判明した。項目(II)については、操作実験を行うことで、繁殖期における雌の脱皮(交尾前脱皮)から雄と出会うまでの制限時間を明確にした。ここから雌雄の遭遇機会(距離)と交尾成功率の推定が可能になった。項目(III)については、30年間の長期データの整理に着手し、当初目標であったデータベースの構築を概ね終了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの経験に基づいて計画および実行しているため、概ね計画通りに進行しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通りに研究を進めていく。研究実績の概要に記した項目(I)の野外調査については、今年度と同じ調査を繰り返しデータを蓄積していく。2022年度に課題として残った標識方法については、2023年度も継続して取り組んで改善する。項目(II)については、雌雄の遭遇機会と雌ひと腹卵の雄の遺伝子多型の関係解明に取り組む。項目(III)については、2022年度から着手したデータベースの整理を終了し、予備解析を実施する。
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Causes of Carryover |
「理由」新型コロナウィルス感染症対策により、共同研究者との対面での打ち合わせおよび解析を控えたため、当初予定していた旅費に次年度使用額が生じた。また、項目(II)の実験が想定よりも少ない量の試薬で実施できたため消耗品費にも次年度使用額が生じた。 「使用計画」旅費に関しては、2022年度に行えなかった対面での打ち合わせおよび解析は2023年度に実施する。消耗品費に関しては、2023年度も同じ試薬を用いて実験を実施するが、当初計画よりも解析量を増やすことを計画しているため、残額分を支出する予定である。
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