2022 Fiscal Year Research-status Report
消費者・食品事業者の意思決定における倫理的思考の研究
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22K05848
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鬼頭 弥生 京都大学, 農学研究科, 講師 (50611802)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 消費者行動 / 公正性判断 / 倫理的意思決定 / 価格判断 / 事業者の倫理的意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、経済性や安全性、環境保全などの様々な属性をもつ商品に囲まれた日常的な食品購買場面を想定し、消費者の食品購買意思決定における倫理的要素の認知・判断の実態と規定要因(小課題1)、および、消費者の価格判断における公正性判断の実態とその規定要因を解明する(小課題2)。また、食品事業者の経営行動意思決定における社会志向性の実態と課題を明らかにする(小課題3)。これらを通じ、持続可能なフードシステム構築に向けた消費者/事業者レベルの取り組みについて、認知科学の視点から知見を得ることを目的とする。 小課題1に対して、令和4年度は、食品購買意思決定の先行研究のレビューを行い、食品購買行動における動機付け・価値観(環境保全重視、社会志向、経済志向、簡便志向、安全性重視、健康志向等)、態度・認知的要因(とくにTheory of planned behaviorの適用について検討)、および購買意思決定プロセスの3つのレベルについての知見・理論を検討した。このうち動機付け・価値観の先行研究整理に基づいて、生協産直の利用理由と動機付け・価値観との関連、その中で倫理的動機付け・価値観がどのように立ち現れるかを、テキストマイニングと対応分析を用いて明らかにした(本課題の準備段階で令和3年度に京都生協組合員を対象に実施した調査データを用いた)。またその過程で、動機付け・価値観に関する尺度の開発・検討を行った。 小課題2に対しては、内的参照価格、価格の公正性の判断に関する先行研究のレビュー、およびそこで参照されている組織公正理論のレビューを行い、価格判断における公正性判断についての理論的な仮説の構築を行った。また小課題3に関しては、事業者の倫理的意思決定に関わる先行研究レビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
小課題1については、当課題の準備として令和3年度に行った調査データを用い、動機付け・価値観尺度を検討するとともに、それら要因(尺度)と生協産直利用理由との関係を実証的に示すことができ、動機付け・価値観の観点に関しては計画以上の進展がみられた。上記のレベルの検証に注力したため、態度・認知レベルについては、先行研究レビューと仮説構築を行ったものの、Web調査による尺度開発を行うに至らなかった。また、意思決定プロセスにおける倫理的要素の研究については、研究領域を広げて探索する必要が生じ時間がかかり、十分な整理を行うに至らなかった。 小課題3については、文献調査に時間がかかり、当初想定していた、先行研究の系統的なとりまとめと食品流通業者を対象とした予備的調査を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
小課題1については、令和4年度の進捗状況を踏まえ、当初計画していた調査・分析の順序を変更することとする。令和5年度には、動機付け・価値観および態度・認知の2つのレベルに焦点を合わせ、調査を設計・実施し、尺度の検証および要因間の関係の分析を行うこととする。食品購買意思決定プロセスにおける倫理的要素の認知・判断に関しては、領域を広げて引き続き先行研究レビューを行い、令和6年度以降に質的調査を設計・実施することとする。その後、さらに、3つのレベルを統合する調査・分析枠組みの開発を試み、検証を行う。 小課題2については、令和5年度に、前年度に構築した理論的仮説をもとに、消費者の価格判断における公正性判断について、調査・分析のための仮説を構築し、調査の準備を行う。先行研究レビューの結果、価格そのものの判断(および公正性判断)と、フードシステムの利益分配の公正性判断についてそれぞれ検証する必要があると判断されるため、順次調査設計を行い、実施・分析することとする。 小課題3については、令和5年度は引き続き文献調査を行い、必要に応じて予備的調査を行う。そのうえで、令和6年度以降に、食品流通業者を対象に経営行動意思決定についての調査を実施し、分析を行うこととする。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、小課題1の食品購買意思決定の要因に関して、とくに態度・認知レベル、動機付け・価値観レベルの要因について、先行研究をもとにWeb調査を行い、各要因の尺度開発を行うこととしていた。しかし、先行研究レビューの結果を精査したところ、本課題の準備段階で実施した調査データにより、動機付け・価値観レベルの要因の尺度開発および検討が可能であった。そのため、令和4年度はその調査データの分析と尺度の検討に取り組むこととし、Web調査を行わなかったため、次年度使用額が生じた。当該助成金については、令和5年度に、態度・認知レベルの尺度開発(令和4年度に実施予定であった事項。可能ならば、要因間の関係の分析も実施する)のためのWeb調査に使用することとする。
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