2022 Fiscal Year Research-status Report
作物生育と微生物活動に着目した水分移動過程における畑地土壌中の窒素動態
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22K05879
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
武藤 由子 岩手大学, 農学部, 准教授 (30422512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 晋生 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10335151)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 窒素動態 / 水分移動 / 作物生育 / 土壌微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌中での窒素炭素動態の理解は,農業の持続的展開や気候変動への適応などの課題解決のために重要であり,そのためには水分溶質移動・土壌微生物活動・植物の根による吸水と養分吸収の相互作用を考慮する必要がある.本研究では,コマツナの根の分布・吸水・窒素吸収および微生物活動が水分移動過程における土中の窒素動態に与える影響を明らかにするための一次元カラム実験を行っている.2022年度は,肥料に硝酸カリウムを使用した硝化の起こらない条件において,根の伸長と働きが土壌中の水分と硝酸態窒素の分布の変化に及ぼす影響を調べることを目的とした実験を行った.その結果,根長分布と動水勾配の変化から吸水強度分布は根の上方から下方への伸長に応じて変化するが,水分量分布の変化には根群域土壌の透水性が影響することが示された.硝酸態窒素はコマツナの根による吸収により減少した.根の伸長過程における硝酸態窒素分布の推移から,根は土壌水と同じ濃度で硝酸態窒素を受動的に吸収しておらず,カラムの下層で能動的に吸収した可能性が示された.また,土壌水分量の低下による水ストレスにより吸水が抑制されると硝酸態窒素の吸収も抑制されたが,給水量に対する硝酸態窒素の吸収量は水ストレスを受けない条件よりも少なかった.また,現場観測のための土壌センサーの検量を行った.本研究で新たなセンサーを用いたため,比誘電率と体積含水率の検量式から導出する必要があった.電気伝導率については,センサーの測定値である見かけの電気伝導率からの土壌水の電気伝導率と1:5水浸出法による電気伝導率の推定を行い,実測値と比較した.さらに,センサーの測定値から推定した土壌水の電気伝導率および1:5水浸出法による電気伝導率からの無機態窒素の推定について検討した.その上で,圃場に設置したコマツナを栽培した試験区での土壌水分量と窒素動態の観測を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施の概要に記載の通り,計画した実験・現場観測を全て行い目的を概ね達成することができた.ただし,吸水と硝酸態窒素の吸収について新たな知見が得られたため,更なる検証が必要となった.
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Strategy for Future Research Activity |
計画では,2023年度には肥料に硫酸アンモニウムを用いて硝化の起こる条件でコマツナ栽培下における一次元カラム実験を行うこととしていた.しかし,2022年度に得られた新たな知見について詳細な検証が必要となったため,先ずはこちらを優先して進めることとする.
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