2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploring enzymes that contribute the biodegradation of biodegradable plastics in agricultural soils
Project/Area Number |
22K05945
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
山下 結香 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 研究員 (00403163)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生分解性プラスチック分解酵素 / 畑土壌 / 土壌微生物 / サブトラクション法 / メタトランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
畑作で使う生分解性プラスチック(生プラ)製マルチフィルムは、使用後土壌に鋤きこむと完全分解される省力化とゴミ削減効果が高い資材だが、分解速度が土壌によって大きく異なることが課題である。生プラを構成するポリエステル(ポリマー)は、主に畑土壌中の微生物が生産する酵素によってモノマーまで分解され、資化される。しかし、その分解速度は環境条件に依存する。分解の律速の一因として初期のポリマー分解過程が考えられるが、詳細は未だに明らかになっていない。 本研究では、モデル実験系を用い、土壌から直接生プラ分解初期に増加する遺伝子の配列情報を得る手法の確立を目指す。本研究によって得られた酵素の情報は生プラ製マルチを導入する際に、土壌が持つ生プラ分解ポテンシャルの事前予測に貢献できると考えられる。 本年度は、生プラ埋設土壌から生プラフィルム分解初期に転写量が増加するmRNAを選抜できるかどうか検証するため、モデル実験系の構築に取り組んだ。まず、使用培土の選抜を行った。タッパーに栄養条件の異なる3種類の培土を詰め、生プラの一種であるポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)フィルムを12週間埋設した。経時的に取り出したフィルムを画像解析し、各培土におけるフィルム分解速度を比較した。このうち最も分解が速かった土壌を使用することにした。次に、生プラフィルム分解時に転写量が増加する遺伝子として、既知の生プラ分解酵素(PCLE)の遺伝子を選択し、この酵素を分泌する真菌 (B47-9株)の培養条件、土壌への接種量や接種方法を検討し、接種の有無によってフィルムの分解に差異が生じる条件を決定した。構築したモデル実験系から経時的にフィルムおよびフィルム周辺土壌のサンプリングを実施し、核酸抽出方法の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
栄養度の異なる3種類の培土を用いて使用土壌の選定を行ったが、想定以上にフィルム分解に時間がかかり、選定が遅くなった。また、B47-9株を用いた接種試験の条件検討にも時間を要したが、本年度中にモデル実験系を構築できた。埋設フィルムを画像解析した結果、B47-9株接種によってフィルムの分解が加速する傾向があることが示唆されたが、RNAを用いたサブトラクション法の検証までは至らなかったという点で遅れが生じている。 しかし、本年度の結果より、フィルム分解に時間がかかることが明らかとなったため、次年度開始を予定していた集積培養を前倒しして実施した。次年度予定していた土壌のサンプリングが終了しているため、次年度は集積培養の効果を検証するための遺伝子解析に注力できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
B47-9株接種土壌から抽出した核酸を使用し、PCLE遺伝子の定量を行う。その後、RNAを用いてサブトラクション法を実施し、生プラ分解初期に発現するmRNAを取得する。さらに、集積培養においてフィルム分解速度に変化があった土壌から核酸を抽出し、埋設フィルム周辺で増加した微生物の情報を取得することで集積培養の効果を検証する。
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Causes of Carryover |
出張がなかったため、予算が次年度に持ち越された。2023年度は畑土壌の採取や学会参加を行う予定である。
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