2023 Fiscal Year Research-status Report
犬猫の慢性腎臓病における酸化ストレスのメカニズムとそのバイオマーカー
Project/Area Number |
22K06005
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
矢吹 映 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (10315400)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 猫 / 高齢 / 酸化ストレス / 腎臓 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、猫の慢性腎臓病(CKD)、特に加齢により自然発生した猫の慢性腎臓病について、腎臓組織の酸化障害とアポトーシスとの関連性について検索を行った。当研究室が所有している組織ブロックから10歳以上の猫の症例を抜粋し、高窒素血症を示すCKDの高齢の猫 (n = 13) と非高窒素血症の高齢の猫 (n = 7)を設定した。アポトーシスの検出は、in situアポトーシス検出法であるTUNEL法で行った。組織の酸化障害は8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシン(8-OHdG)および4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)の免疫染色で評価した。また、組織の酸化障害を引き起こす因子として毛細血管の鬆症化を検索するために、血管内皮マーカーであるCD34についても免疫染色を行った。得られた結果は、統計学的に解析した。 アポトーシスは、全ての症例の尿細管上皮に観察され、高窒素血症の CKD 猫だけでなく、非高窒素血症の猫でも認められた。さらに、全例ではないが、糸球体構成細胞や尿細管管腔の脱落上皮細胞にもアポトーシスは検出された。統計学的解析では、アポトーシスの検出率には非窒素血症分とCKD群との違いは認められなかった。さらに、尿細管上皮細胞におけるアポトーシス細胞の数を定量化し、血液学的腎機能マーカー(BUN、クレアチニン)の値、腎臓組織の病変スコア(糸球体の硬化、間質の線維化)、免疫組織化学的マーカー(8-OHdG, 4-HNE, CD34)の陽性スコアとの関連性を解析した。その結果、アポトーシス細胞の数は酸化障害マーカーである8-OHdGおよび4-HNEのスコアと正の相関が認められた。 以上の結果から、高齢猫において腎臓組織のアポトーシスは、CKDの初期の病態もしくはCKDを誘導する病理変化であり、それは腎臓組織の酸化障害と関連していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
猫の慢性腎臓病に関する病態解析は予定通り概ね終了した。犬の慢性腎臓病の解析についても、現在順調に進んでおり、本年度中には終了する予定である。血液学的解析については、順調に血液サンプルが集まっている。腎生検にサンプルについても今年度は4例が追加され、順調にサンプル数が増えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、犬の慢性腎臓病、特に糸球体疾患における腎臓組織の酸化障害について解析を進めていく予定である。現在まで、一般病理および免疫組織化学的解析はほぼ終了しており、今後、データをまとめて学会発表および論文発表を行いたい。血清や尿の生化学分析のためのサンプル収集は継続して実施し、予定サンプル数に達したらELISAによる解析も行いたい。腎生検および病理解剖によるサンプルの収集も継続して実施していく。
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Causes of Carryover |
発注した消耗品が長期間の出荷停止となり、その影響で少額の残高(1781円)が発生した。この残高は本年度の実験で使用する消耗品にあてる予定である。
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