2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K06102
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻木 崇晴 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (10867906)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スクランブラーゼ / ナノディスク / 単粒子解析 / XKR8 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物の細胞膜を構成するリン脂質はその内側と外側で非対称的に分布している。アポトーシス細胞や活性化リンパ球などではこの非対称性が崩壊し、通常細胞膜の内側のみに存在するホスファチジルセリンが細胞表面に露出する。露出されたホスファチジルセリンはシグナル分子として働く。この過程には、リン脂質を区別無く双方向に輸送する膜タンパク質、スクランブラーゼが働く。XKR8はアポトーシス時にはカスパーゼによってC末端が切断されることにより活性化し、また、ある種の癌細胞ではC末端がリン酸化されることで活性化するスクランブラーゼである。これまでに界面活性剤で可溶化した定常状態のXKR8の立体構造を決定したが、C末端の存在する細胞内領域の分解能は低く、この領域の情報は乏しかった。前年度、XKR8をナノディスクと呼ばれる小さな脂質二重膜に埋め込み、低温電子顕微鏡を用いた単粒子解析により構造を決定した。ナノディスク中の構造ではXKR8のC末端領域の分解能が向上しており、この領域の正確なモデルを組むことができた。当該年度には、このモデルに基づいて変異体解析を行なった。構造解析と変異体解析の結果から、C末端領域がXKR8の細胞質側の溝にプラグのようにはまり込み、定常状態のXKR8の構造を安定化させていることが分かった。また、カスパーゼやキナーゼによるC末端の修飾によりC末端がXKR8本体から解離することが活性型構造への変化を誘導することが示唆された。これらの成果は、カスパーゼによる切断及びリン酸化という2つのシグナルによるXKR8の活性制御を理解する上で、重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活性化型XKR8の構造解析は達成されていないものの、定常状態のXKR8のナノディスク中の構造解析に成功した。これにより、C末端領域の正確なモデルを構築でき、C末端領域によるXKR8の活性制御について重要な知見が得られた。したがって、上記区分を選択する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに定常状態のXKR8をナノディスクに再構成することに成功したが、まだ活性化状態のXKR8を安定化させる条件は見つかっていない。この課題を解決するため、活性化型XKR8を認識するナノボディを開発し、活性化型XKR8を安定化する。安定化されたサンプルを用いて単粒子解析を行い、活性化型XKR8の構造を決定する。定常状態と活性化状態の構造を比較し、XKR8の活性化機構、およびリン脂質スクランブルの仕組みを明らかにする。
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