2022 Fiscal Year Research-status Report
がんシグナル分子PKM2の核移行制御機構の構造基盤
Project/Area Number |
22K06104
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
松浦 能行 国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (10402413)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | X線結晶解析 / 核輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核細胞において、核膜を貫通する核膜孔複合体を通しておこる核-細胞質間の高分子能動輸送は、細胞核機能とその制御を支える重要なプロセスであり、がんなどの病気との関連も深い。細胞質から核へのタンパク質能動輸送を担う代表的な運搬体タンパク質であるimportin-alpha:importin-betaヘテロダイマーは、まず細胞質で積み荷タンパク質(cargo)の核移行シグナルを認識して結合する。このときcargoと直接結合するのはimportin-alphaである。次にimportin-alpha:importin-beta:cargo3者複合体は、核膜孔複合体構成タンパク質群との相互作用により、核膜孔を通過する。本研究で対象としている、がんに関わるタンパク質もこの経路で細胞質から核に輸送されることが知られている。この経路での輸送を促進する核膜孔タンパク質の機能的に重要な領域に相当するペプチドの存在下でimportin-alpha:cargo複合体を結晶化し、結晶を凍結し、高エネルギー加速器研究機構Photon FactoryビームラインBL-17Aで収集した高分解能X線回折データを解析した。既知のimportin-alpha構造をサーチモデルとして、分子置換法により結晶構造を解いた。今回解けた新しい結晶構造において、核膜孔タンパク質に相当する電子密度を明瞭に観察することはできなかったが、importin-alpha:cargo複合体の4次構造としてこれまでに解かれたことがない新規の構造が解けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンパク質複合体の構造解析は、生命現象の分子メカニズムを理解するために必要なタンパク質間相互作用の情報を提供することができる。本研究では、これまでにシンクロトロン放射光を利用して新規のタンパク質複合体の構造解析(高分解能で精度の高い構造解析)に一部成功している。得られた構造は全く予想されなかった興味深いものであった。このような知見が得られていることから、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で最大の目標としているタンパク質複合体に関する構造生物学研究を推進する。実験で構造を解くために、まず試料調製が必要である。大腸菌の発現系を用いて標的タンパク質を大量発現するためのコンストラクトは既に構築しており、精製と機能解析の予備実験により、functionalなタンパク質を精製できることを確認している。この発現精製系を用いて再構成したタンパク質複合体についてX線結晶解析あるいは電子顕微鏡を用いた構造解析を目指す。実験が難航する場合には計算機を用いたドッキングシミュレーションにもトライする。
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Causes of Carryover |
理由:当初予定したほど、物品などの購入に費用がかからなかったため。 使用計画:試薬・消耗品などに必要な額を使用する。
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Research Products
(1 results)