2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22K06248
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
森田 仁 立教大学, 理学部, 助教 (20767701)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 形態形成 / 細胞移動 / 組織張力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脊椎動物の初期発生における器官形成での細胞運動制御メカニズムを明らかにするため、ゼブラフィッシュの心臓形成時に心臓の元となる細胞(心臓前駆細胞)が体の中心軸に移動する仕組みについて解析を行った。 2023年度には、心臓前駆細胞が移動する時の組織の硬さを変化させた場合の細胞移動への影響を検証した。組織の硬さを変化させる方法として、ミオシンII阻害剤であるblebbistatinを用いた。まず、blebbistatin処理によって心臓前駆細胞の移動が阻害されることを確認し、その上で中心軸の組織間隙を広げる実験操作を加えると、blebbistatin処理下であっても心臓前駆細胞が中心軸に到達できることを見出した。このことは心臓前駆細胞とその周囲の組織の硬さと、それらによって形成される物理的環境が、前駆細胞の移動に重要であることを示唆している。また、心臓前駆細胞の移動に異常がある変異体胚に対して、組織間隙を広げる実験操作を行った上で共焦点顕微鏡によるライブイメージングを行い、変異体胚の心臓前駆細胞自体が中心軸に移動する能力を持っていることを確認した。このことから、前駆細胞自体が移動しようとしても周囲の物理的環境が適切な状態でないと、中心軸に向かって移動できないということが考えられた。 本研究では補助事業期間全体を通じて、組織間の物理的構造を変化させる実験手法を確立し、心臓前駆細胞の移動異常に対してその手法を適用することで、心臓前駆細胞の移動に対して組織の物理的特性(硬さ)が重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。この前駆細胞移動については、これまで細胞・組織の物理的特性の重要性は提唱されていなかったため、本研究の成果が前駆細胞の移動メカニズムの解明に貢献することが期待される。
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