2023 Fiscal Year Research-status Report
真核光合成生物における貯蔵物質代謝を介した生存戦略の解明
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22K06299
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
八木沢 芙美 琉球大学, 研究基盤統括センター, 准教授 (70757658)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光合成真核生物 / 原始紅藻 / 飢餓応答 / 生存戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物は栄養の枯渇など細胞が増殖・成長できない環境下においても、長期間、生存することがある。光合成真核生物におけるこのような非増殖・非成長下における細胞の生存戦略は、貯蔵物質の代謝変動を含め、ほとんど理解されていない。本研究では、真核の光合成生物としてゲノムサイズが最小クラスであり(16-20 Mb)、形質転換系が確立された原始紅藻類をモデルに研究を進めている。 本年度は、複数の飢餓条件下における細胞の生存に関わると予測された遺伝子について解析を行った。まず、この遺伝子の破壊株や過剰発現株について、通常条件における貯蔵物質の測定や細胞内構造を解析し、遺伝子の機能に関する知見を得た。さらに、この遺伝子産物(タンパク質)の特徴を理解するため、アミノ酸が置換した変異体等を作成し、このタンパク質の機能に必要な領域やアミノ酸を明らかにした。 次に、いくつかの栄養枯渇条件下において上に示した変異体等を解析し、このタンパク質が複数の栄養飢餓条件への適応に関与することや、この適応に特に必要な領域・アミノ酸を明らかにした。また、このタンパク質は、いくつかの飢餓条件において発現量が増えることが明らかとなった。この量の変動に担う遺伝子を共同研究によって探索したところ、特定の飢餓条件において、この遺伝子の発現制御に作用する可能性のある転写因子が見出された。現在、この遺伝子の欠損株を作成し、機能解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飢餓条件下における細胞の生存に関わると予測された遺伝子について機能を解析し、その上流の制御因子の候補も得られた。これらの成果の一部は論文として投稿する準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
上に示した飢餓条件への適応に関わる遺伝子・タンパク質について、以下の1、2を行う予定である。
1. 系統解析によって、この遺伝子の進化的な背景を明らかにする。この結果や以下に示す制御機構の解析結果を含め、従属栄養生物を含む他生物の飢餓応答機構との比較解析を行い、光合成真核生物における生存戦略の特性について解明を進める。 2. この遺伝子・タンパク質の制御機構について解析する。これまでの変異体等の解析結果から、この遺伝子・タンパク質は複数の経路によって制御されている可能性が示唆されている。一つは転写制御であり、上に述べた転写因子について解析を行う。このために、この遺伝子の欠損株における対象タンパク質の発現変化や、飢餓条件への適応の変化等を解析する。また、この転写因子が栄養枯渇条件への適応においてどのように変化するのか、発現量や局在の変化等について解析する。この転写因子が飢餓条件への適応に関わらない場合にも、他の制御経路に関わる可能性のある遺伝子が複数挙げられることから、これらについて遺伝子破壊株等を作成し、制御機構の解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究の一部を他研究室との共同研究で行ったことや、予定していた旅費を別予算から支出したことによって計画より支出減となった。本研究計画の遂行に必要な消耗品や受託解析等の価格、旅費等が上昇していることや、価格帯が高くとも付加価値のある受託解析等が新たに提案されていることから、繰越予算は、これらの項目に使用する計画である。
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Research Products
(1 results)