2022 Fiscal Year Research-status Report
過剰栄養シグナルが精子運動性低下を招くメカニズムの解明
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22K06334
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中越 英樹 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (50314662)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 妊性 / 精液 / 栄養シグナル / 分子シャペロン / ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエのオスの妊性を担う附属腺は,約1,000個の主細胞と60個の第二細胞から構成される.転写制御因子Defective proventriculus (Dve) は蛹期では附属腺全体で発現が見られるのに対し,成虫期では第二細胞でのみ見られる.これは成虫期主細胞ではプロテアソーム活性によりDveが常に分解されているためである.しかし,過剰栄養シグナルや小胞体ストレスを受けるとプロテアソーム機能が阻害され,Dveの分解が停止して安定化する「Dve脱抑制」が生じ,オスの妊性が低下する.ストレス期間を変化させた実験により,Dve脱抑制はストレス強度に依存した可逆的な現象であることが分かった. また,Dve脱抑制時には附属腺タンパク質 (Acps) の一つである Sex Peptide (SP) の安定性が顕著に低下することから,分子シャペロンとしての機能をもつ Heat shock proteins (HSPs) が Dve 標的因子の候補となった.RNAi スクリーニングによって同定された HSP83 について詳細な解析を行ったところ,転写活性をモニターできる hsp83-GFP レポーターの発現は,Dve 脱抑制を誘導したモザイク細胞において著しく低下していた.しかしながら,附属腺全体に Dve 脱抑制を誘導した場合は hsp83 mRNA量は上昇していた.つまり,HSP83 は通常時 SP などの附属腺タンパク質の安定化や基底レベルで生じているストレスの緩和などに働いており,ストレスが亢進すると hsp83 発現が上昇して初期ストレス応答を行うが,さらなるストレス亢進によって HSP83 では対処できなくなると Dve 脱抑制を介した緊急時応答に切り替える機構が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNAi スクリーニングによって,Dve 標的遺伝子の有力候補を同定することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
Dve 脱抑制時に発現が低下する Dve 標的遺伝子候補がマイクロアレイ解析によって同定されているため,これらの遺伝子群について解析を進める予定である.
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Causes of Carryover |
飼育チューブなどを再利用することで支出削減に努めた結果,219,324円を次年度に繰り越すことができた. 翌年度分の助成金とともに消耗品の購入資金に充てる予定である.
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