2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K06335
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
柴田 武彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 研究員 (70087550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣田 耕志 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (00342840)
正井 久雄 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 所長 (40229349)
笹沼 博之 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 副参事研究員 (00531691)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 相同DNA組換え / 相同DNA対合 / RecA/Rad51族組換え酵素 / ハイブリッド二本鎖 / 相同三重鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
RecAがdsDNAの塩基対を開き、できたss域で相手のssDNAとアニールしてハイブリッド二本鎖 (Hyb-ds) をつくる「二重鎖開裂が先」モデルと、逆に、ds構造が開く前にssDNAとの相同配列が見つけ出される「二重鎖開裂が後」モデルとがある。RecAによるHyb-ds 形成で最初にできる6-8塩基程度の核が、「二重鎖開裂が後」モデルに特有な相同並行三重鎖であることを示すことで「二重鎖開裂が後」モデルが正しいことを示す証拠を得ることが、本研究の目的である。そのためには、高感度二本鎖DNA巻き戻しアッセイと共に、Hyb-ds核形成の機能を保ちながら、その核をDループへ変換し、成長させるRecAの第2の機能を抑制できるかが鍵になる。 a. Hyb-dsの核をDループへ変換し、成長させるRecAの第2の機能を抑制し、Hyb-ds核形成段階でトラップするためのrecA変異体候補として、Yangらのクライオ電子顕微鏡解析(Nature 2020) の結果から明らかになった、Dループの両端で二本鎖DNAの解列を安定化しているL2ループ先端のPhe203をAlaに置換したF203A変異をもつrecA変異体を精製して、Dループ形成への影響を解析した。その結果、F203A変異recAでもDループを形成することが分かり、Phe230による二本鎖DNA解列はDループ形成に必須ではないことがわかった。 b. 高感度ds巻き戻しアッセイ系を開発して、RecA野生型によるDループ形成過程での二本鎖DNAの巻き戻しを解析した。その結果、一本鎖DNAとの相同配列を探している段階では、3000塩基対の二本鎖DNAは1回転の巻き戻しも起こらず、互いに相同な塩基配列を識別した後に初めて二本鎖DNAの巻き戻しが起こることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要のa とb で述べた結果は、「二重鎖開裂が先」モデルとは相いれず、「二重鎖開裂が後」モデルを支持する。この結果は、「二重鎖開裂が後」モデルが正しいことを示す証拠と言える。これらの結果をまとめた論文は、2023年年末に、Nucleic Acids Research 誌 (IP: 19) に受理され、2024年の初頭に出版された。
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Strategy for Future Research Activity |
野生型RecAはDループを精製したのち、ATP加水分解に依存してできたDループを一本鎖DNAの5'-3'へ移動させて解離する「Dループ加工」活性を合わせて持つ。Hyb-dsの核をDループへ変換し、成長させるRecAの第2の機能を抑制し、Hyb-ds核形成段階でトラップするためのrecA変異体候補として取得、精製した、Dループの両端で二本鎖DNAの解列を安定化しているL2ループ先端のPhe203をAlaに置換したF203A変異をもつrecA変異は、Dループは形成するが、できたDループを解離することができないことが分かった。その結果、F203は、むしろ、相同三重鎖をDループに成熟させる機能をもつ可能性が、また、203A変異はHyb-ds核形成段階でトラップする可能性が示唆された。さらに、相同三重鎖とDループとを区別する手法を導入し、この課題の目的である相同三重鎖の存在の検証を行う。
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Causes of Carryover |
巻き戻しの定量には、帆三重鎖、Dループを作るための一本鎖DNAを33Pで標識することによって分解能を上げることができる。ところが、そのために必要なγ33P-ATPは最小購入単位が税込みで50万円とγ32P-ATPの15倍近い価格である上に、半減期が25.4日であり長期の保存ができない。そのために、32Pによる標識で実験を進めている。最終的な検証のためには、高分解能の実験を行う必要があるが、そのためにγ33P-ATPを購入することとして、その資金を残している。
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