2023 Fiscal Year Research-status Report
海浜環境への進出初期段階におけるアブラナ科野生植物ジャニンジンの適応進化
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22K06355
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
岩崎 貴也 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 講師 (10636179)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アブラナ科 / 野生植物 / 海浜環境 / ゲノム / ジャニンジン |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、前年度に栽培・抽出したジャニンジンの高分子DNAを用いて高精度なゲノム配列を解読すること、そして海浜系統と森林系統の間での変異を探索することを主な目的として研究を実施した。PromethIONでロングリードシーケンスデータ(それぞれの系統で約17 Gb)を取得して解析した結果、海浜系統で全長183.7 Mb(コンティグ数:15、N50:21.6 Mb)、森林系統で全長183.4 Mb(コンティグ数:18、N50:24.0 Mb)のゲノムを構築することができた。先行研究からジャニンジンの属するアブラナ科タネツケバナ属の染色体基本数は8と推定されており、完全に染色体レベルとは言えないものの、かなり高精度なゲノムを構築することができたと言える。また、遺伝子アノテーションの結果、それぞれ約2万7千個の機能遺伝子を推定することができ、その並びにも高いシンテニーが保存されていた。さらに、それぞれの系統についてショットガンゲノムシーケンス用のライブラリも作製し、DNB-SEQによってショートリードシーケンスデータも得た。それらを同じ系統、そしてもう一つの系統にマッピングしたところ、系統間で約60万ヵ所の遺伝的変異を検出することができた。さらに、アノテーションした機能遺伝子情報と合わせて絞り込んだところ、約2千の変異が遺伝子の機能的に大きな影響を及ぼしている可能性が高いことが予想された。また、それらの変異によって大きな影響を受けると予測されたのは、様々な代謝プロセスに関する遺伝子が中心であったことから、海浜環境への進出では代謝プロセスでの適応が重要であった可能性が考えられる。並行して行った塩分ストレス応答を調べる栽培実験では、塩分スプレーに対する葉の耐性に大きな違いがあることが示唆されており、今後はこちらについても葉の構造や機能遺伝子との関係を今後調べていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
注目しているジャニンジンの森林・海浜の両系統については、予定通り、ロングリードシーケンスデータを用いた高精度なゲノム解読を行うことができた。また、系統間での遺伝子の比較や、ショートリードシーケンスデータを用いた系統間の変異の検出についても予定通りに進めることができている。ストレス栽培実験での遺伝子発現解析については2023年度中に完了させることができなかったものの、全体としては順調に研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度中に実施できなかったストレス栽培実験での遺伝子発現解析については、2024年度中のできるだけ早い段階で解析を行う。また、これまでの研究によって森林環境から海浜環境への進出に関係していることが示唆された機能遺伝子については、遺伝子発現解析の結果も参考にしながら絞り込みを行い、適応遺伝子、そしてその中の重要な変異の特定を目指す。また、他地域の系統についてもショットガンシーケンスを行い、2023年度に構築したゲノム情報を元にして世界的なゲノムの地理的変異について解析し、海浜環境への適応を担った遺伝的変異がどのようにして沖縄で固定したのかを推定する。
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Causes of Carryover |
ストレス栽培実験の遺伝子発現解析のためのシーケンス外注が間に合わなかったため、その分の予算を2024年度に繰り越した。2024年度のできるだけ早い段階でこちらの実験も行い、データを得る。
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