2023 Fiscal Year Research-status Report
ほぼ全ての種間で自然雑種を形成する日本産カンガレイ類の種多様性創出機構の解明
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22K06358
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
布施 静香 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30344386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 浩司 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60647478)
田村 実 京都大学, 理学研究科, 教授 (20227292)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ホソガタホタルイ属 / カンガレイ節 / 雑種形成 / 種多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本産カンガレイ類の種多様性創出機構を雑種の存在に焦点を当てて解明することである。野生植物の雑種を介した種多様性創出機構を探るためには、様々な種の組みあわせで雑種を形成する植物群を用いるのが良いと考えられる。日本産カンガレイ類は11種からなるが、そのうち10種は互いに交雑し、昨年度私たちが見つけた新雑種を含めて17もの自然雑種が報告されている。しかし、今までに報告された自然雑種の多くは、大まかな形態情報、結実率情報、染色体情報などが雑種性の根拠となっており、DNA 塩基配列の情報によって雑種性や両親種が明示された例はまだ少ない。 今年度は熊本県で報告された“ネヒキサンカクホタルイ“と呼ばれる植物について、DNA 塩基配列の情報による雑種性の検証及び両親種の特定、また詳細な形態形質の観察と整理を試みた。その結果、“ネヒキサンカクホタルイ“は、ホタルイ(Schoenoplectiella hotarui)とツクシカンガレイ(S. multiseta)の雑種であり、ホタルイ・ツクシカンガレイとも種子親・花粉親のいずれにもなり得ることが明らかになった。また、これらの3植物は、肉眼による形態的識別が可能であり、稈の横断面の形状の違いの他、地下茎の節間長や苞の長さについては、“ネヒキサンカクホタルイ“は両親種であるホタルイとツクシカンガレイの中間的な値を示す事が明らかになった。 日本産カンガレイ類植物の系統関係については、DNA塩基配列を用いた解析を進め、ヒメカンガレイ(S. mucronata var. mucronata)の変種とされていたロッカクイ(S. mucronata var. ishizawae)は、ヒメカンガレイよりもカンガレイと遺伝的により近いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本産ホソガタホタルイ属(カンガレイ類)の自然雑種について、DNA塩基配列情報や詳細な形態情報を蓄積することができた。また、カンガレイ類植物の系統関係を明らかにするため、NGSを用いたゲノムワイド解析をスタートさせた。カンガレイ節各種のサンプリングもおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
【1】試料収集・生育環境調査・形態解析: 日本産ホソガタホタルイ属(カンガレイ類)全種全雑種についてサンプリングを継続する。雑種集団のサンプリング時には、個体と生育環境のデータを結び付けられるようマッピングを行う。得られたサンプルは形態観察を行い、集団間の形態的相違を整理する。【2】雑種の稔性調査:雑種について花粉稔性と種子稔性を調べる。【3】染色体観察:押しつぶし法によって染色体数と倍数性を明らかにする。【4】種間の系統関係の解明:より詳細な系統関係を明らかにするためNGSを用いて塩基配列を取得し、分子系統樹を構築する。【5】雑種の父親種・母親種の確定:核(両性遺伝)と葉緑体(母性遺伝)の塩基配列を解析することで決定する。【6】集団ゲノミクス解析による遺伝的構造の把握:次世代シーケンサーを用いて、各集団から一塩基多型(SNPs)の検出を行う。この情報をもとに、対象種・雑種の遺伝構造を明らかにする。そして、日本産カンガレイ類における種をまたいだ遺伝的交流の程度を推定する。【7】各雑種集団の維持機構の推定:カンガレイ類の繁殖方法には、種子繁殖以外に、無性芽や株分けによる栄養繁殖がある。そこで、どのようにして各雑種集団が維持されているのかを野外観察とゲノムワイド解析から明らかにする。種子繁殖を行う集団においては、自殖と他殖の両側面から考察する必要があるため6で得たSNPsデータを用いて自殖率/他殖率を推定する。
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Causes of Carryover |
今年度はすでに収集された試料や標本、および研究協力者らによって収集された試料等を用いて研究を行ったため、試薬類や旅費の執行が抑えられた。 次年度は四国や北陸に産するホソガタホタルイ属(カンガレイ類)植物の現地調査も行い、NGSによりDNA解析をはじめとする各種実験を行う。
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Research Products
(2 results)