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2023 Fiscal Year Research-status Report

捕食回避のための托卵は多種の共存を促進するか?―ダニ類を用いた実証―

Research Project

Project/Area Number 22K06385
Research InstitutionChiba University

Principal Investigator

長 泰行  千葉大学, 大学院園芸学研究院, 准教授 (90595571)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords托卵 / 捕食者ー被食者間相互作用 / ギルド内捕食 / 捕食回避 / 生物多様性
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、ミヤコカブリダニ(以下、ミヤコ)が卵を保護する習性をもつキイカブリダニ(以下、キイ)に托卵することで、両者の卵を捕食するミカンキイロアザミウマ(以下、アザミウマ)とともに共存しやすくなる、という仮説を検証するものである。本年度は、キイがミヤコの托卵に対して産卵選好性および卵の保護をどのように変化させるかについて検証を行った。
キイがミヤコの卵そのものに対してどのような反応を示すか調べたところ、卵2個に対しては避けなかったが、20個に対しては忌避を示した。この反応は、托卵をしないチリカブリダニ(以下、チリ)の卵に対しても同様だった。キイは自分の卵がある産卵場所に好んで産卵する。そこにミヤコの卵を2個追加すると、キイは自身の産卵場所への選好性がなくなり、20個追加すると避けるようになった。一方、チリの卵を追加しても、キイは自身の産卵場所に好んで産卵し続けた。キイが自身の卵を守っている場所にミヤコやチリの卵を追加し、托卵がキイの卵の生存に及ぼす影響を検証したところ、ミヤコの卵が20個あるときのみキイの卵の生存率が低下した。また、キイの卵をミヤコおよびキイの幼虫と一緒にしたこところ、ミヤコの幼虫がいる時のみキイの卵の生存率が低下した。つまり、ミヤコの卵の存在ではなく、孵化した幼虫による卵の捕食によって、キイの卵が低下することが明らかになった。これらの結果から、托卵するミヤコの個体数が多いほど、キイは自身の卵を保護することが出来なくなり、産卵場所を放棄しやすくなることが示唆された。
これらの成果は、第83回日本昆虫学会で招待講演、第68回日本応用動物昆虫学会で一般公演で発表された。また、関連する内容の論文は、国際学術誌であるFunct Ecol, Oecologiaに掲載され、Anim Behav, Exp Appl Acarolへの掲載が決定している。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究課題では、卵を保護する種(キイカブリダニ、以下、キイ)と保護しない種(ミヤコカブリダニ、以下、ミヤコ)が卵捕食者(ミカンキイロアザミウマ、以下、アザミウマ)とともに自然界で共存する機構として托卵が重要な役割を果たすことを示すため、以下の3点、(I) アザミウマによる卵捕食のリスクに対するミヤコの産卵選好性、(II) ミヤコの産卵に対するキイの産卵選好性と卵の保護、(III) アザミウマによる卵捕食のリスクに応じたキイ・ミヤコ・アザミウマの共存、について注目して研究を行う計画である。
(I)の研究内容は昨年度実施し、その成果として本年度、Functional Ecologyにおいて学術論文として公表した。また、その新規性から、数多くの新聞においてその成果が紹介された。一方、研究計画で本年度に予定した(II)の研究内容は、上述の「研究実績の概要」で説明した通り、キイが托卵されたミヤコの卵の数に応じて産卵場所を変化させ、それは自身の卵の生存率の低下を防ぐことにつながることが示された。これに関連する成果は、学会発表や学術誌を通じた社会に向けて公表された。
上記のような理由から、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断される。

Strategy for Future Research Activity

本研究課題を推進していくうえで最終年度は、卵捕食者(ミカンキイロアザミウマ、以下、アザミウマ)キイカブリダニ(以下、キイ)・ミヤコカブリダニ(以下、ミヤコ)・アザミウマの共存、について検証を行う予定である。その際、キイとミヤコにとって餌であり卵捕食者でもあるアザミウマ幼虫の齢期や密度を検討する。アザミウマ1齢幼虫よりも2齢幼虫の方が卵捕食が強いことは知られているが、卵捕食が強すぎるとキイが卵を保護することが出来なくなる可能性がある。予備実験として、卵捕食が起きた場合にキイの産卵場所への反応やミヤコの托卵がどう変化するかを調べる。一方、本年度の研究結果よりキイの産卵場所にミヤコの卵が多く産卵されると、キイは産卵場所を放棄することが分かった。そのため、キイとミヤコを1:1の比率でアザミウマとともに維持し、キイあるいはミヤコの存在によってアザミウマと共存しやすくなるかどうかを調べる。キイのみではアザミウマは食い尽くされるが、キイとミヤコがいることによってアザミウマを含めた3種が共存しやすくなるという結果を予想している。
昨年度は、共同研究者でもあるオランダ・アムステルダム大学のArne Janssen博士のもとを訪問し、実験方法、結果の解析、実験の解釈などについて議論を行う予定であったが、先方と都合が合わず訪問できなかった。円安や航空運賃の高騰などの問題もあるが、今年度こそは研究をまとめるにあたって研究打ち合わせを行いたと考えている。もし無理な場合には、時差の問題があるもののオンライン会議などで対処する予定である。

Causes of Carryover

共同研究者であるオランダのアムステルダム大学のArne Janssen博士のもとを訪問し、研究打ち合わせを行う予定であったが、お互いの都合が合わなかったため訪問できなかった。最終年度に訪問したいと考えているが、円安や航空運賃の高騰といった問題もあり、研究遂行に支障が生じるようであれば、行動解析のためのビデオカメラの購入や、成果を国際学術誌に公表するための英文校閲費用として使用する予定である。

  • Research Products

    (9 results)

All 2024 2023

All Journal Article (4 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results,  Peer Reviewed: 4 results) Presentation (5 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] Leaf trichome-mediated predator effects on the distribution of herbivorous mites within a kidney bean plant2024

    • Author(s)
      Yoshida Tatsuya、Choh Yasuyuki
    • Journal Title

      Experimental and Applied Acarology

      Volume: - Pages: -

    • DOI

      10.1007/s10493-024-00915-6

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Adult females and larvae of the predatory mite Gynaeseius liturivorus avoid cannibalism via kin recognition2024

    • Author(s)
      Shishikura Suzuno、Choh Yasuyuki
    • Journal Title

      Animal Behaviour

      Volume: 211 Pages: 35~41

    • DOI

      10.1016/j.anbehav.2024.02.021

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Sister predatory mites collectively protect their eggs against predators2024

    • Author(s)
      Choh Yasuyuki、Janssen Arne
    • Journal Title

      Oecologia

      Volume: 204 Pages: 653~660

    • DOI

      10.1007/s00442-024-05521-2

    • Peer Reviewed / Int'l Joint Research
  • [Journal Article] A tiny cuckoo: Risk‐dependent interspecific brood parasitism in a predatory mite2023

    • Author(s)
      Choh Yasuyuki、Janssen Arne
    • Journal Title

      Functional Ecology

      Volume: 37 Pages: 1594~1603

    • DOI

      10.1111/1365-2435.14332

    • Peer Reviewed / Int'l Joint Research
  • [Presentation] 托卵するミヤコカブリダニは寄主卵の捕食に対して産卵選好性を変える2024

    • Author(s)
      長 泰行
    • Organizer
      第68回日本応用動物昆虫学会
  • [Presentation] キイカブリダニ雌成虫による他個体の卵の保護2024

    • Author(s)
      西川 紗恵、 長 泰行
    • Organizer
      第68回日本応用動物昆虫学会
  • [Presentation] キイカブリダニ母親の日齢が卵の保護行動に及ぼす影響2024

    • Author(s)
      新開 翼、 長 泰行
    • Organizer
      第68回日本応用動物昆虫学会
  • [Presentation] 捕食者の生理状態がナミハダニの忌避反応に及ぼす影響2024

    • Author(s)
      吉田 達也、 長 泰行
    • Organizer
      第68回日本応用動物昆虫学会
  • [Presentation] 托卵するのはカッコウでしょうか、いいえ、ダニでも ―ミヤコカブリダニは卵が食べられそうな時だけ托卵する―2023

    • Author(s)
      長 泰行
    • Organizer
      日本昆虫学会第83回大会
    • Invited

URL: 

Published: 2024-12-25  

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