2022 Fiscal Year Research-status Report
Toward an integrated theory of the relationship between chemotrophic microbial communities and free energy
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22K06390
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
瀬戸 繭美 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (10512717)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 微生物群集 / ネットワーク / 生体エネルギー論 / 酸化還元化学 / ギブスエネルギー / 個体群動態モデル / 化学合成微生物 / 物質循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は多様な化学反応からエネルギーを獲得する微生物群集や群集の合成するネットワークの特徴量と、エネルギーを普遍的に記述する熱力学におけるエネルギー状態量との関係を理解するための方法論の確立と理論構築を目指す。生物多様性と生態系の物質流やエネルギー流により与えられるとする生態系機能との関係は長く生態学における1つの問いであるが、反応の利用の多様性と化学エネルギーの関係性を理論的に問う点が本研究の新規制である。 初年度に当たる令和4年度は、申請者がこれまで開発してきた数理モデルを発展させ、数百-数千から成る化学反応と微生物種から構成される生態系ネットワークシミュレーションを実施可能とするEco-Redoxモデルを開発した。Eco-Redoxモデルによる数値演算を網羅的に実施することにより、単純なネットワークから構成される群集のエネルギー利用と複雑なネットワークから構成される群集のそれを比較することが可能となった。その結果、ネットワークの複雑性(微生物代謝機能の多様性)や分業による循環構造の維持が、群集全体におけるエネルギー転換効率を上昇することを発見した。本研究成果を2本の論文にまとめ、現在それぞれ国際誌に投稿・査読中である。また、本研究成果に関する成果を国内の学会やシンポジウムで8件発表し、内6件が招待公演、1件が国内開催の国際シンポジウムである。 ここまでで得られた仮説を検証するために、窒素反応ネットワークに特化したEco-Redoxモデルにより、微生物窒素代謝ネットワーク進化の再現研究を進めている。また、実証研究を模索するため、水圏の電位測定と環境DNAサンプリングを合わせた化学エネルギーと微生物群集組成動態のモニタリングに着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は 1) 系の有する自由エネルギーが化学合成微生物群集の種数、生産性、相互作用パターンに与える影響 2) 化学合成微生物群集の相互作用パターンが自由エネルギーの利用効率に与える影響 の2つを理論的に理解することをテーマとしたが、これまでの研究成果でこの2つに対し理論的な仮説を提唱することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で想定以上に研究を進展することができたため、今後はこれまでに得られた仮説を検証するための方法論を模索することに力を注ぐ予定である。Eco-Redoxモデルは化学系と生命系の普遍的関係性を理解するために化学反応系を抽象的に取り扱った。この反応系に具体性を与え、実際の生態系の微生物エネルギー代謝系の再現を試みることは、モデルの妥当性検証となる。そこで、Eco-Redoxモデルの反応系を窒素化学種の反応系に置き換え、微生物窒素代謝ネットワークが再現可能か否かのシミュレーション実験を試みる。また、現実の生態系における微生物群集と化学エネルギーの関係性を評価するための実証研究を模索するため、エネルギー指標となる酸化還元電位の測定と環境DNAサンプリングを実施しながら、方法論の確立を検討する。
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Causes of Carryover |
現在投稿中の論文についてオープンアクセス化を希望しているが、円安の影響でオープンアクセスにかかる費用が上昇しているため、翌年度に一部予算を残すこととした。
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