2022 Fiscal Year Research-status Report
単細胞光合成生物における変動する環境下でのエネルギー生産と消費戦略の解明
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22K06396
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
藤原 崇之 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (10595151)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 単細胞藻類 / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然環境は一定ではなく、日周や天候、季節などで変わる。真核藻類が変わりうる生息環境において、どのようにその変化に応答また適応し、増殖や生存を図っているのかを明らかにすることは、生態系のエネルギー・物質循環を理解する上で重要である。しかしながら、これまでの多くの実験は、一定の条件下でかつ自然環境ではありえないほどの富栄養培地を使って行われてきた。このような実験系では、真核藻類が実生息環境で進化させてきた環境適応機構を誤って理解する可能性がある。そこで、令和4年度は、実験室において実生息環境を再現することを目指した。研究対象とする真核藻類は、硫酸酸性温泉に優占的に生息する単細胞紅藻シアニジウム類に決定した。まず、温泉地において季節ごとあるいは異なる生息温度帯に生息するシアニジウムを単離した。つぎに採取した環境水(温泉水)をつかったシアニジウム類の培養を試みたが、バッチ培養でシアニジウム類を維持することはできなかった。環境水の栄養塩類を分析した結果、環境水はきわめて貧栄養であり、これが原因で藻類類を維持することができないと考えられた。そこで、栄養塩類を枯渇させることなく継続的に供給するために、簡易的な連続培養を行った。その結果、環境水でシアニジウムを培養することに成功した。自然環境は通常培地と比較して貧栄養であるが、継続的に栄養塩類が供給されるため、シアニジウム類が生存できると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験室内で真核藻類の実生息環境を模倣するための基礎である、環境水を使った藻類の培養が上手く行きつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
シアニジウム類は自然環境では春から夏に増殖し、秋から冬は増殖せずにどうにか生存する。どのように寒冷期に適応し生存するのかを明らかにするために、(1)模擬生息環境培養系で温度を変化させて培養する。その時に藻類細胞がどのような環境応答をしているのかを解析する。(2)実生息環境の各生息温度帯または各季節において、野外トランスクリプトーム解析を行う。
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Causes of Carryover |
2022年度末に予定していた次世代シークエンス解析の計画をサンプル取得の遅延のため、取りやめた。これに使用する予定であった予算は、サンプルを取得し次第、次世代シーケンス解析を行うための費用として、2023年度に持ち越した。
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