2022 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical studies on spatial ecology in terms of point patterns
Project/Area Number |
22K06401
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
高須 夫悟 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (70263423)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 空間個体群動態 / 点パターン / 点過程 / モーメント法 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物個体を点で表現し、各点が様々な状態を持ちうるマーク付き点パターンダイナミクスとしての空間個体群動態モデルの解析に取り組んだ。マーク付き点パターンダイナミクスの具体例として感染症SISモデルに注目し、距離依存する感染率の仮定の下で、1点がある状態にあるシングレット確率と、2点からなるペアがある状態にあるペア確率の力学系を導出した。点が移動せず、点の出生と死亡がない場合の解析は既に完了しているが(Hamada and Takasu 2019)、点が移動しかつ点の出生と死亡がある状況ではシングレットとペア確率に注目する方法は適用できないことが大きな問題であった。この問題を打開するため、確率では無く、モーメント法を用いて点密度としての1次モーメントとペア密度としての2次モーメントの力学系を導出する方法を新たに開発した。従来のモーメント法は点の状態を考慮しない方法(点の出生・死亡・移動のみを考慮)であったが、点の状態が変化する(SからI、IからSなど)場合でも、ある仕掛けを導入することで点パターンダイナミクスの点密度とペア密度の力学系を導出することが出来ることを明らかにした。導出したモーメントの力学系はシングレット確率ペア確率と同値であることを確認した。 導出した点密度とペア密度の力学系は、積分微分方程式であり、これをどう解くかが今後の課題である。 感染症モデルは基本的にメタポピュレーションモデルと同値である。Sを空地、Iを占有地と見なすことで、SIS点パターンダイナミクスはそのまま空間メタポピュレーションモデルとなる。Hamada and Takasu 2019 に距離に依存しない感染率(長距離移動分散率)を導入したモデルを解析し、学術雑誌に投稿した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
従来のモーメント法を拡張し、点の状態変化を考慮した点密度とペア密度の力学系(積分微分方程式)を導出できたことは大きな進展である。点の出生・死亡・移動に加えて「状態変化」という個体ベースのアルゴリズムが積分微分方程式として記述できた事になる。導いた積分微分方程式は多数の項から構成され、一見非常に複雑に見えるが、各項は点ならびにペアの変化を幾何学的に表現しており、直感的にも理解しやすい数式となっている。導出した積分微分方程式の解法が次の大きな課題である。 導出した積分微分方程式は一般的な解を求めることは極めて困難である。点の状態を考慮せず、点の移動のみを考慮する単純な場合(各点が一定の移動分散核にしたいジャンプ移動する)については、年度末に解法のめどがたち、現在解析を進めているところである。 以上の理由により、研究は当初の計画以上に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
点の状態を考慮せず、点の移動のみを考慮する単純な場合(各点が一定の移動分散核にしたいジャンプ移動する)は、いわゆる拡散過程に相当し、偏微分方程式(拡散モデル)の一般解が知られている。昨年度末にめどを立てたジャンプ拡散に相当する解と拡散モデルの解を比較する。 点の出生と死亡、状態変なを含む一般的な場合について、今年度は出生と死亡の密度依存性を無視した線形ルールの下での解析に取り組む予定である。 既に解析済みの点パターンSISモデル(Hamada and Takasu 2019)に、局所密度に依存する出生率と死亡率を導入したモデル、ならびに、状態SとIに依存して点が移動するモデル、の解析に取り組む。
|
Causes of Carryover |
初年度にシミュレーション解析用の並列計算機一式(計算機とディスプレイ)を導入する計画であったが、別予算で並列計算機本体を導入することが出来たため次年度使用額が発生した。次年度では、研究遂行のためのプリンターなどの備品や、研究集会・学会発表のための旅費、ならびに消耗品として有効に利用する計画である。
|
Research Products
(5 results)