2022 Fiscal Year Research-status Report
愛着行動を生み出す仔マウスの脳活動とその神経基盤の解明
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22K06425
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鹿糠 実香 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 研究員 (80842682)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 愛着行動 / 輸送反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、哺乳類に広く見られる愛着行動である「輸送反応」に注目する。輸送反応とは、哺乳動物において、母親が仔を口でくわえると仔が瞬時にコンパクトな姿勢をとり、おとなしくなる反応のことであり、そのメカニズムはほとんど解明されていない。 私たちは、仔マウスの輸送反応時の脳活動の記録に成功した。その結果、輸送反応時には、特定の脳部位において特徴的な脳活動が誘導されることを見出した(Kanuka et al., unpublished)。この神経活動の誘導が、仔マウスの速やかな沈静化に寄与する可能性が考えられる。そこで本研究では輸送反応の神経基盤の解明を目指し、どの脳部位のどの神経細胞サブタイプが、輸送反応および輸送反応中の脳活動の変化の誘発に重要な役割を担うかを明らかにすることを目的とした。 これまでに仔マウス輸送反応に特定の分子マーカーを発現する神経細胞が重要であることを見出した。具体的には、ジフテリアトキシン存在下でこの神経細胞サブタイプを遺伝的に破壊したマウスでは、正常な輸送反応が起こらなかった。この神経細胞サブタイプは、いくつかの脳部位に存在する。これら神経細胞の機能を脳部位ごとに阻害することで、仔マウス輸送反応に関与している脳部位を特定することが期待できる。 今年度は関与している脳部位を特定するため、数種の神経伝達物質に作用する薬剤を用いて輸送反応への影響を確認した。これらのうち2種類の薬剤において用量依存的に輸送反応に影響が認められた。そこでこの薬剤の薬効から推測される脳部位を阻害した仔マウスを作製して輸送反応を確認した。具体的にはCre依存的に神経細胞サブタイプを破壊するLSL-DTAノックインマウスと標的脳部位のCreマウスを掛け合わせて仔マウスを作製し、輸送反応の関与を確認した。その結果、輸送反応への影響が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
輸送反応に関与している脳部位を特定するため、数種の神経伝達物質に作用する薬剤を用いて仔マウス(C57BL/6J, 生後11日~12日)に対する輸送反応への影響を確認した。このうち、2種類の薬剤において用量依存的に輸送反応の抑制が認められた。これらの薬剤の作用機序から推測される脳部位の機能(X)を阻害した仔マウスを作製して輸送反応を確認することにした。具体的にはCre依存的に神経細胞サブタイプを破壊するLSL-DTAノックインマウスとX-Creマウスを掛け合わせて仔マウスを作製し、生後12日に人工的な刺激によって輸送反応を誘導させ、輸送反応時の姿勢を維持する時間を指標として評価した。その結果、コントロールマウスに比較して目的のマウスは有意な輸送反応の抑制を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
輸送反応の抑制が認められたマウス(X-Cre;LSL-DTAノックインマウス)に脳波電極を取付け、生後12日の輸送反応時の脳波を計測し、脳活動を調べる。また、輸送反応に影響が認められた2種の薬剤を投与したマウスについても輸送反応時の脳活動への影響を調べ、輸送反応のメカニズム解明につなげる。
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Causes of Carryover |
計画していた一部のマウスの交配実験で、流産や仔マウス成長不良が続いたことで実験の遅れが生じた。また、参加を予定していた学会が新型コロナウイルスの影響によりオンライン開催となったため、出張を見送った。これらのことから次年度使用額が生じた。 動物維持費、当初計画していなかった神経伝達物質に作用する薬剤購入に使用する。
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