2022 Fiscal Year Research-status Report
意欲行動に関わる視床神経回路素子の構造と機能の解明
Project/Area Number |
22K06452
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮坂 信彦 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 副チームリーダー (70332335)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脳 / 神経回路 / 視床 / 行動 / ゼブラフィッシュ / 学習 / 記憶 / モチベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
動物は生きるために索餌・摂食し、外敵から身を守り、さらに種の保存のために子孫を残す。このような動物の基本的な行動にも、根源的な意志の力である意欲が重要な役割を果たしている。 これまでに、熱帯魚ゼブラフィッシュの腹内側視床において、神経ペプチドcrh(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)を発現する特定のニューロン集団が意欲行動とリンクして活性化することを見出している。本研究では腹内側視床crhニューロンが構成する神経回路の構造と機能を明らかにするために、遺伝子工学的な回路の可視化および機能操作が可能なトランスジェニック系統の作製を行った。まず遺伝子発現解析により、腹内側視床crhニューロンは、視床領域にありながら、終脳のマーカーとして知られるT-box型転写因子を発現することを見出した。また、視索前野や視床下部に存在するcrhニューロンはこの遺伝子を発現していないことを確認した。そこで、Cre/loxPシステムを用いた細胞タイプ特異的な遺伝子操作を行うため、DNA組換え酵素をコードするCre遺伝子をT-box転写因子の遺伝子座に挿入したトランスジェニック系統を作製した。crhニューロン特異的に蛍光タンパク質を発現し、かつCre依存的に蛍光タンパク質の種類を赤色から緑色に変換できるloxPリポーター系統と交配したところ、腹内側視床のcrhニューロンを視索前野や視床下部のcrhニューロンと区別して標識することができた。以上のように、腹内側視床crhニューロンの神経接続の詳細な解析に向けて、有用な遺伝子工学的ツールを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腹内側視床crhニューロンを標識する遺伝子工学的ツールの作製に成功し、より詳細な解剖学的解析に向けての準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
CRISPR/Casを介したノックイン法により、腹内側視床crhニューロンを可視化するための遺伝子工学的ツールが得られた。今後はこのツールを用いて神経接続の詳細な解析を行う。また、回路の機能解析に必要なトランスジェニック系統を作製し、意欲行動における腹内側視床crhニューロンの機能解析を推進する。ただし、研究代表者の所属機関内での部署および職位の変更により、本研究課題に充てられる時間が当初計画より減少するため、次年度は神経接続の解剖学的解析に重点をおいて研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
トランスジェニック系統の樹立に予定よりやや時間を要し、系統維持費、神経回路の可視化および機能操作のための費用の一部が繰り越しとなった。
繰越金および次年度請求分を合わせて、樹立した系統の維持費、神経回路の可視化と組織化学的解析の消耗品費、機能解析のための新たなトランスジェニック系統の作製費、さらには研究成果発表のための費用に使用する。
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