2022 Fiscal Year Research-status Report
神経-グリア間相互作用の調節を通じた、社会行動の制御メカニズム
Project/Area Number |
22K06493
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
島田 忠之 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (80379552)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グリア神経間相互作用 / 結節性硬化症 / 細胞外マトリクス / シナプス形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
アストロサイト特異的Tsc1ノックアウトマウスを利用し、NF-kB活性が社会行動に影響を与えているかを解析した。ノックアウトマウスではアストロサイト特異的にNF-kBのリン酸化が亢進していることをすでに見出していたため、NF-kBの活性阻害剤をノックアウトマウスに投与し、社会行動の異常が改善するかを解析した。阻害剤投与マウスでは社会行動の異常が回復していることが観察された。さらに、組織学的解析により、アストロサイトにおけるNF-kBのリン酸化も低下していることが確認された。 また、NF-kBの下流において発現が調節される因子を同定するため、培養グリア細胞を用いたスクリーニングを行った。Tsc1ノックアウトアストロサイト、Tsc1; synteninダブルノックアウトアストロサイト、コントロールアストロサイト、また、Tsc1ノックアウトアストロサイトの培地にRheb活性阻害剤、あるいはNF-kB活性阻害剤を添加したものを作製した。それらのアストロサイトから、それぞれmRNAを回収し、マイクロアレイ解析、および定量PCR解析を行った。得られた定量結果から、Tsc1ノックアウトにより発現が上昇し、Synteninノックアウト、およびRhebあるいはNF-kB活性阻害により発現上昇が抑えられる遺伝子群の同定を試みた。 得られた候補遺伝子群の中で、細胞外に分泌されると考えられるものを中心に定量解析を行い、Tsc/Rheb/Syntenin/NF-kBシグナルに依存して発現が調節されていると考えられる因子を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、NF-kBの活性がノックアウトマウスの表現型に関与していることを示せた。これはマウスへ投与可能でありin vivoで機能すると考えられる阻害剤を使用できたことが大きい。 またスクリーニングも順調に進み、候補因子の同定に成功した。グリアの培養は以前より行っていたが、mRNAの単離、マイクロアレイ解析、定量PCR解析については所属研究室、所属研究機関のサポートが十分に得られた結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた因子群が、タンパク質レベルにおいてもTsc/Rheb/Syntenin/NF-kBシグナルに依存して発現量が変動するのか否かを解析する。 さらに、得られた因子群が神経細胞の形態や、機能に影響を与えるのかを明らかにするために、培養神経細胞に対し精製因子を培地に添加し、神経細胞の形態、機能を解析することで、同定因子が神経細胞に及ぼす効果を解明する。樹状突起スパインの形態、シナプスの形成、神経発火の頻度の優先順位で解析を進めたい。
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Causes of Carryover |
研究申請後に円安が進み、海外雑誌への論文出版費が多かったため、前倒し請求を行ったが、使用する動物の数や必要とする試薬の量などが見込みよりも少量で済んだため、若干の次年度使用額が生じた。 この未使用額は主に学会参加などの研究成果公開のために使用予定である。
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