2022 Fiscal Year Research-status Report
質量分析による環境中ラン藻類迅速同定・分類法の開発
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22K06568
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
今西 進 名城大学, 薬学部, 准教授 (00757502)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ラン藻 / 分類・同定 / 質量分析 / MALDI / DART |
Outline of Annual Research Achievements |
質量分析を用いたラン藻類の迅速分類・同定法の開発に取り組んだ。 これまでmatrix assisted laser desorption/ionization-time of flight(MALDI-TOF)型質量分析計を用いて病原性微生物等の迅速同定を行うことができるMALDI Biotyperに着目し、ラン藻類の分類に応用するため、培養した単離ラン藻株を用いて測定条件の検討を行ってきた。しかし、池や湖から採取した野生のラン藻はサンプル水中に様々な物質を含んでいることが多く、MALDI Biotyperによる自動測定で得られたマススペクトル上では十分なシグナルノイズ比(S/N)のイオンピークを検出することが困難であり、手動でレーザーパワーを増強させる必要があった。そこで高いレーザーパワーによる自動測定を行えるよう条件検討を行い、野生ラン藻の迅速測定を可能にした。野生ラン藻は愛知県内の池から採取した。ラン藻類の分類・同定に必要なスペクトルライブラリを作成するため、研究室内で培養している単離ラン藻株に加え、さらに単離ラン藻株を追加購入し、検討した測定条件を用いてスペクトルを取得・収集している。 また、より簡易かつ迅速な質量分析を可能にするアンビエントイオン化法の1種であるdirect analysis in real time(DART)イオン化に着目し、ラン藻類の分類・同定への応用を試みている。予備検討において、クラスタリングにより低分子有機化合物のマススペクトルを区別する解析法を構築したため、これを培養ラン藻株から抽出した揮発性有機化合物のDART質量分析に応用し、抽出時に培地成分の混入を抑えることにより、少数ではあるがラン藻株を区別することができた。さらに再現性を向上させるため、測定条件の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MALDI BityperおよびDART質量分析によるラン藻類分類・同定法の開発はおおむね計画したように進展している。しかし結果の一部に再現性が得られていないため、引き続き測定・解析条件の検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
検討したMALDI Biotyperの測定条件を用いて、培養した単離ラン藻株のスペクトルライブラリおよび系統樹を作成する。スペクトルライブラリを拡充していくため、単離ラン藻株は随時追加購入する。また、前年度に野生ラン藻を採取した池から再度採取を試み、MALDI Biotyperによるラン藻優先種の継時的な観察を行う。 DART質量分析に関しては、測定日間や測定者間での測定結果を比較検討し、再現性の高い分類結果を得られるよう、試料調製法、測定法およびクラスタリング法の条件検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況を鑑み、単離ラン藻株の注文の一部が年度末になったため、次年度に受注し支払うことになった。 また、新型コロナウイルス感染拡大に加え、海外への旅費も非常に高騰していたため、計画していた国際学会への参加を次年度以降に見送ることにした。
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