2022 Fiscal Year Research-status Report
出生後心臓の冠血管・交感神経ネットワーク形成の原理と心臓発達における重要性の解明
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22K06842
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
冨田 拓郎 (沼賀拓郎) 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (60705060)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 交感神経 / 心臓発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
交感神経は、成体においては、血管緊張や心臓の陽性変力作用を調節し、全身の循環動態に重要な役割を果たす。しかしながら、心臓において交感神経は、出産時には心臓基部にのみ分布し、出産後に心臓全体に投射していくことが明らかにされている。本研究では、この出産後の心臓の交感神経投射の分子機構を明らかにするとともに、交感神経投射が心臓の成熟に与える影響を明らかにすることを目的とする。交感神経の伸長および生存には神経成長因子(Nerve growth factor, NGF)が重要であることが知られている。これまでに申請者は、出産後の心臓におけるNGFの発現解析から、出産後から離乳期に至るまでにその発現が変動することを明らかにしていた。本年は、アデノ随伴ウイルス(AAV)とCRISPR/Cas9系を組み合わせた細胞特異的ノックアウト系を用いて心臓のNGFの発現を抑制し、その影響を解析した。また同様にAAVを用いて、心臓内における交感神経を蛍光タンパク質ラベルすることにより、交感神経投射の経日的な変化を観察することを目指している。しかしながら、AAVシステムの構築において難儀している。そこでAAVシステムを立ち上げると同時に、心臓発達における交感神経の重要性を明らかにするため、交感神経を化学的に徐神経し、その影響の解析を行った。その結果、交感神経の徐神経は、心筋細胞の発達および心臓の冠血管の発達に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究においては、AAVを用いて細胞特異的にNGFの発現を調節したり、蛍光タンパク質を用いて、交感神経や血管を可視化することが重要なポイントとなっている。これまでの研究において、NGFは心筋細胞、血管平滑筋細胞、心線維芽細胞等で発現していることが報告されている。本年度は、心筋細胞および血管平滑筋細胞特異的プロモーターを用いて、それぞれの細胞におけるNGFノックアウトを試みた。しかしながら、心筋細胞においてAAVの感染は確認できたが、NGF発現の抑制は確認できなかった。この結果は、心臓全体におけるNGFの産生元として心筋細胞はそれほど大きなウェートを占めていないことが示唆された。血管平滑筋細胞特異的にノックアウトするAAVは冠動脈での感染が十分でなく導入されなかった。一方、AAVによる交感神経細胞の蛍光タンパク質ラベリングは可能になった。しかしながら、Cre/LoxPシステムを用いた場合に限られ、直接的に交感神経特異的遺伝子Dopamine beta-hydroxylase (DBH)プロモーターの下流から蛍光タンパク質を発現させることは成功しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
AAVの感染において、その導入効率が十分でなかったため、当初予定通りに研究が進んでいない。現在、AAVの力価を上げて導入することを検討している。また、NGFの心臓における発現細胞が当初の予測とは異なることが明らかになった。そこで、心臓におけるNGF発現について、細胞群をフローサイトメトリーを用いて分離し、それぞれにおけるNGF発現を解析することにより、どの細胞がNGF産生に重要であるかを明らかにしていく。
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