2023 Fiscal Year Research-status Report
出生後心臓の冠血管・交感神経ネットワーク形成の原理と心臓発達における重要性の解明
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22K06842
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
冨田 拓郎 (沼賀拓郎) 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (60705060)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 交感神経 / 心臓発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
交感神経系は、出産後から離乳期までの間に心臓全体に投射し、心臓支配を完了する。出産から離乳期までの間に、心臓は、幼若な表現型から成体と同様な成熟した表現型へ変化することがこれまでに明らかにされている。本研究では、心臓の成熟における交感神経支配の重要性を解明することを目的としている。心臓の成熟において重要なのが、エネルギー産生の基質の変化である。成体の心臓は、脂肪酸酸化によりATPを産生するが、出産直後はグルコースを用いてATP産生を行うことがよく知られている。そこでこのATP産生機構の変換に交感神経が重要であるかどうかを検討した。交感神経の影響を除去するために、6-hydroxydopamine (6-OHDA)を出産後1日および7日のマウスにおいて処置し、化学的徐神経を行った。出産後21日目にマウスを安楽死後、心臓を摘出し、qRT-PCRおよびウエスタンブロッティングにより、脂肪酸酸化に関与するタンパク質群の発現をSaline投与群と比較した。その結果、脂肪酸代謝に関わる因子の発現変化は6-OHDAによる交感神経徐神経の影響を受けないことが明らかになった。またこれまでの検討により、6-OHDA処置をしたマウスから単離した心筋細胞において、T管の構造の発達が異常になることを見出していた。T管構造の形成には、Bin1やJunctophilin-2というタンパク質が重要であり、心筋細胞の成熟に伴い、その発現が上昇することが報告されている。そこで、それら因子の発現に6-OHDAが与える影響を解析した。しかしながら、両タンパク質の発現に6-OHDA投与による影響は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、主に、心臓の発達に重要であり、その発現が心臓発達に伴い上昇してくる因子について、交感神経支配の重要性を検証した。しかしながら脂肪酸酸化に関わる因子、およびT管形成にかかわる因子等、検討したすべての因子において、6-OHDA処置による影響は認められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、文献的に心臓発達に重要な因子を、標的を絞って解析を進めてみた。しかしながら、この方法では、いたずらに時間や費用が掛かってしまう。そこで、2024年度については、6-OHDA処置群およびSalineの対照群から心臓を単離し、その中でも左心室のみにおいての遺伝子発現変化をRNAシークエンシング法を用いて網羅的に解析する。そこで変化が見えた遺伝子について、心臓発達における重要性を検討して、交感神経支配による心臓成熟の制御について解明していく。
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Causes of Carryover |
RNAシークエンシングの解析受託を2024年度に入ってから行うことにしたこと。および2023年度に論文投稿費として残しておいたが、論文投稿がずれ込んでしまったため、2024年度の投稿として、その費用を繰り越したため。
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