2022 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中・認知症治療標的の探索を企図した細胞間相互作用の時空間的解析
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22K06865
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
肱岡 雅宣 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (50780061)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脳内出血 / アルツハイマー病 / ケモカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内出血(ICH)およびアルツハイマー病(AD)はいずれも根治療法が確立されていない疾患である。本研究では両疾患で増加する走化性因子に注目した解析を行うためにサイトカイン/ケモカインを網羅的に探索した結果、ケモカインXが両疾患モデルマウスの脳内で著明に増加することを見出した。 まず、認知症モデルとしてアミロイドβ(Aβ)の蓄積およびグリオーシスを呈す前臨床性ADモデルマウスであるApp KIマウス(6ヶ月齢)を用いた解析に着手した。App KIマウスにおけるケモカインX産生細胞を同定すべく単一分子蛍光in situハイブリダイゼーション(smFISH)と免疫組織化学染色の共染色を実施したところ、Aβの蓄積部位に集簇するミクログリアでケモカインXの高発現が認められた。一方でAβが蓄積しない部位のミクログリアではケモカインXの発現が認められなかったことから、Aβに集簇するミクログリア特異的な遺伝子発現変化であることが示唆された。今後はAβ周囲のミクログリアの性状に焦点を当てて解析を進める。 また、ケモカインX欠損マウスに対してコラゲナーゼ投与により脳内出血惹起した結果、野生型マウスと比較してケモカインX欠損マウスでは運動機能障害の重篤度が軽減される傾向が見られた。今後は試行回数を増やすとともに病理組織解析についても進める。加えて、ADモデルマウスで行ったようにsmFISHを実施することでケモカインX産生細胞の同定を行い、空間特異的な変化を見出すべく解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ICH、ADいずれにおいてもケモカインXの病態生理学的意義解明を見出すに繋がるような知見を得ることができたため、概ね計画通りである。次年度は研究初年度で得られた知見をもとにケモカインX欠損マウスの病理解析へと展開することで、両疾患におけるケモカインXの病態生理学的機能を深堀りしていくとともに、計画最終年度に予定している混合モデルの開発に向けた予備検討も進める。
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Strategy for Future Research Activity |
ADモデルマウス(App KIマウス)では初年度に見出した知見をもとにAβ蓄積部位に集簇したミクログリアの解析に注力する。手法としては空間的トランスクリプトーム解析による遺伝子発現パターンの解析を予定している。加えてケモカインXを欠損したApp KIマウスの病理解析および認知機能解析も行う。 ICHモデルマウスでもADモデルマウス同様にsmFISH等の手法を駆使して産生細胞の特定を行い、特徴的な発現パターンを見出した場合は空間的トランスクリプトーム解析も行いたい。さらに、初年度同様にケモカインX欠損マウスに脳内出血を惹起して行動解析、病理解析を進める。
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Causes of Carryover |
一部試薬の納入において納期遅延が生じたため次年度使用額が生じた。試薬の納入が遅れたものの当初計画との変更はなく次年度に継続して研究を実施する。
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Research Products
(5 results)