2022 Fiscal Year Research-status Report
テトラヒドロビオプテリンによる神経・循環器系の機能調節と疾患治療への挑戦
Project/Area Number |
22K06871
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
一瀬 千穂 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (10247653)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | テトラヒドロビオプテリン / チロシン水酸化酵素 / リン酸化 / 一酸化窒素 / 自律神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
セピアプテリン還元酵素(SPR)遺伝子の第1エクソンの5’上流にloxPサイト、第2-第3エクソン間のイントロンにFRT-pgk-ネオマイシン耐性遺伝子-FRTとその3‘下流にloxPサイトを挿入したマウスと、ヒトドパミンβ水酸化酵素(DBH)プロモーター-Cre-ERTトランスジェニックマウスを交配し、Sprfl/fl, Cre-ERT、Sprfl/fl、Sprfl/+マウスを作成した。次いでこのマウスにタモキシフェン(Tam)を投与し、Spr遺伝子を誘導的に破壊したTamを投与しない段階で、Sprfl/fl, Cre-ERTマウス、Sprfl/flマウスでは、副腎(Ad)でのSPRの発現量はC57BL/6の5.3%および7.6%、Sprfl/+マウスでは47.3%に低下していた。Adのビオプテリン(Bio), ノルエピネフリン(NE), エピネフリン(Epi,) ドパミン(DA)の量はC57BL/6、Sprfl/fl、Sprfl/fl, Cre-ERT、 Sprfl/+間で有意差がなかった。Sprfl/fl, Cre-ERT、Sprfl/fl、C57BL/6 (6-7カ月齢、♀マウス、n=3)に対しTam 1 mgを連続5日間腹腔内投与し4週間後に組織の生化学的解析を行ったところ。Sprfl/fl, Cre-ERTマウスの副腎(Ad)でエクソンの除去が検出された。Tam を投与したSprfl/fl, Cre-ERTマウスのAdのBioはSprfl/fl、C57BL/6と差がなかったが、EpiおよびDAはC57BL/6に比べて有意に減少していた。Adでは髄質細胞でのBH4産生が低下しそれに伴ってDAと最終産物のEpiが減少したが、チロシン水酸化酵素(TH)のリン酸化状態を変化させるには十分ではないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
蛍光ウエスタンブロッティングで組織ライセートを用いて、THとそのリン酸化体を定量する条件を決定した。一方、Sprfl/fl, Cre-ERTマウスではSpr遺伝子の誘導的破壊によって、THのリン酸化状態を変化させるほど大きなBH4の減少を起こすことはできなかった。SPR遺伝子の破壊にもかかわらずBio量が変化しなかったことから、SPRによるBH4の生合成過程はアルドース還元酵素などで代替される可能性があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
脳組織および副腎のライセートを免疫沈降し、ユビキチン化THの検出を試みる。また免疫共沈法と質量分析によってTHと共存する因子の同定を試みる。BH4欠損マウスにBH4、L-DOPA(ドパミン前駆物質)、L-threo-DOPS(NE前駆体)、D2およびα2アゴニストを投与し、組織におけるTHのたんぱく質量とリン酸化状態を変化させる条件を探索する。BH4生合成の律速酵素であるGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)遺伝子の誘導破壊マウスを作成し、BH4の減少を確実に起こす。このマウスでは交感神経系の異常を生じる可能性が高いが、心電図の周波数解析でこれを検出する。
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Causes of Carryover |
1遺伝子組み換え体マウスの個体化にかかる経費が必要だったため前倒し請求を行った。実際の費用が見込みより若干安価になったため残額を生じた。次年度はマウスへの薬物投与、抗体を用いた解析と質量分析が中心となることから、これらの実験に必要な消耗品費が必要であると考えている。
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