2023 Fiscal Year Research-status Report
テトラヒドロビオプテリンによる神経・循環器系の機能調節と疾患治療への挑戦
Project/Area Number |
22K06871
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
一瀬 千穂 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (10247653)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | テトラヒドロビオプテリン / チロシン水酸化酵素 / リン酸化 / 一酸化窒素 / 自律神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)テトラヒドロビオプテリン(BH4)を欠損するマウスで生じるチロシン水酸化酵素(TH)たんぱく質の減少がユビキチン化を介するか否かを調べるため、 ①野生型マウスとセピアプテリン還元酵素(SPR)遺伝子ノックアウト(Spr-/-)マウスの副腎、線条体、中脳、橋・延髄の組織ライセートを抗TH抗体で免疫沈降し、抗TH抗体と抗ユビキチン抗体で検出する実験を行った。ユビキチン化THと考えられるバンドは検出されなかった。 ②野生型マウスとSpr-/-マウスの線条体スライスを作成し、プロテアソーム阻害薬であるMG132の添加及び非添加で3時間培養し、そのライセートを用いてTHのたんぱく質量の変化とユビキチン化の検出を行った。その結果MG132によるTHの分解抑制効果やユビキチン化THは検出されなかった。 ③この過程でSpr-/-マウスの副腎のTHのたんぱく質量は野生型と同程度、線条体と中脳のTHはそれぞれ野生型の0.7%, 40%程度であること、Spr-/-マウスの副腎と線条体においてはSer40のリン酸化が亢進していることが確認された。 (2)TH遺伝子の第5-第6エクソンの間と第9-第10エクソンの間にloxPサイトを挿入したマウスと、ヒトドパミンβ-水酸化酵素プロモータ-Cre-ERT2トランスジェニックマウスを交配してThfl/fl マウス、Thfl/fl, Cre-ERT2,マウスを作成した。これらのマウスにタモキシフェン1mgを5日間連続投与した。投与前、投与終了後10日目と1カ月後にTail Cuff法で血圧と心電図を測定した。その後胸大動脈を採取し、フェニレフリンに対する血管収縮とこれに対するアセチルコリン、Sodium Nitroprussideの弛緩反応を比較した。予備的な結果ではあるが、心拍数、心電図の周波数解析、血管反応について顕著な差が認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
In vivoでのTHのユビキチン化を検出するのは難しいと考えられた。 BH4欠損マウスにBH4、L-DOPA(ドパミン前駆物質)、L-threo-DOPS(NE前駆体)、D2およびα2アゴニストを投与し、組織におけるTHのたんぱく質量とリン酸化状態を変化させる条件を探索する実験も進行中であるが、マウス個体を対象としているため時間を擁している。
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Strategy for Future Research Activity |
BH4生合成の律速酵素であるGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)遺伝子にloxPサイトを導入したマウスにDBH-CreERT2を導入した誘導破壊マウスを樹立済みである。このマウスで副腎を含むノルアドレナリン細胞特異的にBH4の減少を起こし、THのリン酸化およびたんぱく質量の時間的な変化を検討する。 一方並行してラット褐色細胞腫由来のPC12D細胞より免疫共沈法を用いてTHと相互作用する分子を精製し、LC-MSで同定する。これによりTHの安定化もしくは不安定化にかかわる分子を探索する。
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Causes of Carryover |
本年度は条件検討をおこなう実験が多く、残額を生じた。次年度は遺伝子改変マウスを使用する実験とともに培養細胞と抗体を用いた解析と質量分析を並行して行うことから、これらの実験に必要な消耗品費が必要になる。
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