2023 Fiscal Year Research-status Report
嗅神経軸索におけるmRNA局所翻訳の機構と生理的意義の解明
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22K06895
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
福田 七穂 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (00415283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 佳奈子 新潟大学, 脳研究所, 助教 (60708212)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | RNA結合タンパク質 / 嗅神経細胞 / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞では、軸索や樹状突起などの細胞体から離れた部位において、特定のmRNAが局所的に翻訳されることが知られている。このような「mRNA局所翻訳」は、軸索伸長やシナプス可塑性を担い、神経疾患にも関連することから、その機構の解明が求められている。 私達はこれまでに、RNA結合タンパク質 hnRNP A/Bの欠損マウスにおいて、嗅神経回路の形成不全が生じることを見出した。hnRNP A/Bの主要な標的遺伝子であるProtocadhelin alpha(Pcdha)は、hnRNP A/B依存的に嗅神経細胞の軸索末端に強く発現していた。このことから、hnRNP A/BがPcdhaの軸索末端における発現制御を介して嗅神経回路の形成を担う可能性が示唆された。そこで、令和5年度はPcdha遺伝子の3'-UTRからhnRNP A/B認識配列を含む領域を欠失させたマウス(Pcdha-UTR欠失マウス)を作製し、解析した。Pcdha-UTR欠失マウスでは、嗅神経細胞におけるhnRNP A/BとPcdha mRNAとの結合が低下した。また、嗅神経細胞の細胞体側におけるPCDHAタンパク質の発現に変化は見られないものの、軸索末端におけるPCDHAタンパク質の発現に有意な低下が見られた。さらに、重要なことに、Pcdha-UTR欠失マウスでは嗅神経回路の形成不全が認められた。これらの結果から、hnRNP A/Bは3'-UTR上の認識配列を介して神経回路形成に関わる因子のmRNAに結合し、それらの軸索末端におけるタンパク質発現を促進することにより、嗅神経回路の形成に寄与していることが示され、論文に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Pcdha-UTR欠失マウスの解析から、hnRNP A/Bが細胞接着因子をコードする遺伝子の軸索末端における発現制御を介して嗅神経回路形成を担うことが示され、論文に発表することができた。他の標的mRNAについても順調に解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに樹立したhnRNP A/B標的遺伝子の3’-UTR配列欠失マウスについて、当該遺伝子の嗅神経細胞における発現様式の解析を進める。また、嗅覚組織の形態学的な解析を行い、3’-UTR配列の欠失が嗅覚組織の形成や機能に与える影響を解析する。
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Causes of Carryover |
論文投稿料の支出のために令和5年度の予算が不足となり、令和6年度予算の一部を前年度使用した。残額20,480円は予定通り令和6年度の実験に使用する。
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