2022 Fiscal Year Research-status Report
癌リンパ節転移における癌支援環境の解明とその解除メカニズムの解析
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22K06998
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
神田 泰洋 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00436768)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リンパ節 / ストローマ細胞 / 癌転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパ節の組織微小環境は癌の転移や定着に有利に作用することが想定されるが、リンパ節内においてストローマ細胞や免疫細胞がどのようにして癌支援環境を形成しているのかは未だ不明である。本研究ではリンパ節ストローマ細胞が産生するケモカイン及びストローマ細胞自体の変容によるリンパ節における癌支援微小環境の実態を明らかにするとともに、免疫チェックポイントによる癌支援環境解除のメカニズムを明らかにすることを目的とする。 初年度は、リンパ節ストローマ細胞からのケモカイン産生が欠如する遺伝子改変マウスを使用し癌増殖を観察した。これまで癌原発巣のCXCL12が癌増殖を促進することは知られていたが、本研究では癌所属リンパ節で産生されるCXCL12も癌の促進に寄与していることを明らかにした。また、OVAを癌抗原として発現する癌細胞をマウスに接種し癌抗原特異的な免疫応答を解析することで、癌所属リンパ節における抗癌免疫応答を検証する検出系を立ち上げ、フローサイトメトリー等により解析を行った。この解析では、事前に癌細胞を生着させたリンパ節において事前に癌を生着しないリンパ節と比べ、癌抗原特異的T細胞の増殖やIFN-γなどの癌抑制的に作用するサイトカインの産生が抑制されるとともに、制御性T細胞(Treg)の増加が確認された。このことから癌の定着により癌所属リンパ節において抗癌免疫応答が抑制されることが示唆された。このメカニズムを解明するため、CXCL12とそのリガンドであるCXCR4の結合をAMD3100投与により遮断し、CXCR4発現Tregの抑制を試みたが癌所属リンパ節における癌免疫応答の抑制は解除されなかった。引き続き遺伝子改変マウスやTreg除去マウスを用いて免疫抑制解除の機序を検索していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変マウスを用いた解析により、リンパ節ストローマ細胞が癌増殖に関与することを明らかにすることができた。また、癌所属リンパ節における抗癌免疫応答を特異的に観察し、癌による免疫抑制動態の解明が進んでいる。これらの知見からほぼ計画通りにリンパ節微小環境と癌促進との関連性を示すことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
癌所属リンパ節のストローマ細胞が転移を促進するか明らかにするため、ストローマ細胞特異的な遺伝子改変マウスを用いて癌転移のストローマ細胞による影響を解析する。また、ストローマ細胞性質変容による癌促進因子の促進について、癌関連因子などのRNA発現解析やRNAseqを行うことにより明らかにする。さらに、癌所属リンパ節での免疫抑制を解除するメカニズムを解明するため、遺伝子改変マウスや抗体によるTreg除去およびPD-L1などの抑制因子のブロッキング時におけるリンパ節内免疫細胞の解析を行い、癌による免疫抑制応答およびその解除機構を評価する。
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Causes of Carryover |
癌所属リンパ節の免疫抑制応答は確認できたが、抑制分子の充分な解析まで至らなかったため次年度使用額が生じた。次年度、この解析に使用する。
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