2022 Fiscal Year Research-status Report
住血吸虫の宿主自然免疫ハイジャックによる寄生適応戦略の解明
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22K07044
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中村 梨沙 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (50645801)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 住血吸虫 / エクソソーム / 宿主自然免疫 / 寄生虫ー宿主間相互作用 / 寄生適応 / 細胞外小胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
住血吸虫は、宿主体内で成熟し、長期生存するために宿主の免疫応答を回避して寄生適応する。ある特定の宿主自然免疫細胞を欠損したマウスでは、住血吸虫の成長・産卵が著しく阻害された。これは、住血吸虫が宿主自然免疫を利用し成長・産卵するという、免疫回避とは異なる寄生適応戦略をもつことを示唆する。住血吸虫のエクソソームは宿主自然免疫をハイジャックし調節する機能をもつ。本研究は、住血吸虫のエクソソームが宿主自然免疫細胞の機能を調節し、自身の成長・産卵を促すという仮説を検証する。 R4年度は、感染後、宿主体内で住血吸虫の成長が止まる場・時期を特定し、住血吸虫エクソソームの単離、形態・性状を解析することを目的とした。まず、ある種の自然免疫細胞を欠損したマウスに住血吸虫を感染後、経時的に寄生組織である肺、腸管静脈の虫体数および肝臓の虫卵数を検討した。その結果、感染1週間後の肺寄生時には住血吸虫数の差異は認められず、感染5週以降の腸管静脈寄生時には虫体の成長不良、虫体数および肝の虫卵数の減少を確認した。 また、特定した臓器・感染時期における住血吸虫エクソソームの回収方法を精査した。感染マウスから回収した住血吸虫の培養上清中のエクソソームの分離を試みたが、性状の解析まで至らなかった。エクソソームは微小かつ多種多様な分子の複合体であるため、分離し機能を特定すること自体が難しい点がある。それ故、住血吸虫エクソソームと宿主自然免疫細胞の相互作用が、住血吸虫の成長・産卵へ及ぼす影響は解明されていない。引き続き、効率的かつ高精度な回収方法の検討を行い、住血吸虫エクソソームが自然免疫細胞を調節し寄生適応するのか、その機序の解明に繋げたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R4年度は、研究代表者の妊娠により、予定していた検討が実施できなかったこと及びR4年度中に産休に入ったことが進捗状況に影響した。また、エクソソームの分離に必要不可欠な超遠心分離機が故障したため、実験方法の変更、条件検討の長期化が余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、特定した寄生組織・感染時期の住血吸虫エクソソームの分離を確立し、その性状・性質及び包含物の同定を行う。単離した微粒子が住血吸虫由来のエクソソームであることを証明するため、ウェスタンブロット法、電子顕微鏡にて可視化し、表面マーカーの解析等を行う。 また、住血吸虫エクソソームが宿主自然免疫細胞の動態・機能に及ぼす影響を探る。住血吸虫エクソソームと宿主自然免疫細胞の共培養やエクソソームの移入実験を行い、住血吸虫エクソソームと宿主自然免疫細胞の機能・動態への影響をin vitro, in vivo の双方から検討する予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者が妊娠し、R4年度内に産休に入ったため。 研究課題を円滑に遂行するために必要な実験消耗品、共同機器・施設利用料等に使用する。 得られた研究成果を広く発信するため、学会発表の旅費および論文投稿費に充てる。
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