2022 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the action mechanism of cytoadherence inhibiting antibodies to Mycoplasma pneumoniae and application to vaccine antigen design.
Project/Area Number |
22K07063
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
見理 剛 国立感染症研究所, 細菌第二部, 部長 (80270643)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Mycoplasma pneumoniae / 細胞接着タンパク質 / モノクロ抗体 / 感染防御抗体 / エピトープ解析 / ワクチンデザイン / 滑走運動性 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
M. pneumoniae の細胞接着を強く阻害する抗P1モノクローナル抗体(P1-MC4)は、P1タンパク質のC末端側を抗原として作製された。このP1-MC4が認識するエピトープを特定するため、P1タンパク質のC末側を連続的に断片化したペプチドを準備し、P1-MC4との反応性を調べた。その結果、P1-MC4が認識するのはP1の13アミノ酸残基T1426-D1438(TDLFDPVTMLVYD)であることがわかった。P1の結晶構造では、この配列はC末ドメインの中にあるループ構造にあたる。この部位は、P1とP40/P90 が2分子ずつで形成する細胞接着タンパク質複合体 (Nap) では、複合体の内側になると考えられる。Napが閉じた構造の時は抗体はエピトープにアクセスできないと考えられる。この部位に抗体がアクセスし、細胞接着阻害活性を発揮するのはNapが機能する際に動的な構造変化を起こし開いた構造をとっている可能性が考えられる。これは M. pneumoniaeの細胞接着性や滑走運動のメカニズムを考える上で有用な情報であり、P1-MC4とP1の結合状態の詳細な解析が望まれる。今後、P1-MC4と P1が結合した状態の構造解析を行うため、前段階として、P1-MC4のアミノ酸配列分析を行った。P1-MC4を生産するハイブリドーマからmRNAを抽出し、cDNAの塩基配列を分析した。その結果、ハイブリドーマからは1本の 抗体H鎖と 2本の L鎖 のmRNAが検出された。P1-MC4は2種のL鎖が混合したモノクローナル抗体であったことがわかった。このH鎖と2本の L鎖の配列はAccession No.LC600310、LC600311、LC600312でデータベースに登録した。P1-MC4 は、L鎖が2種類含まれているため、Fab断片の結晶化による構造解析は困難であると予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
M. pneumoniae の細胞接着を阻害するモノクローナル抗体(P1-MC4)が認識するエピトープ部位を明らかにした。また P1-MC4のアミノ酸配列を解読した。研究計画の初期目標は達成された。これらの情報は、今後進める P1-MC4 と P1 の結合状態の詳細な分析、および細胞接着阻害抗体を効率よく誘導するワクチン抗原デザインのために有用である。
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Strategy for Future Research Activity |
P1-MC4 をパパインで処理、精製し、Fab 断片を得る。Fab断片と P1タンパク質を結合させた状態で結晶化を試みる。P1-MC4 の Fab には2種類のL鎖が含まれるため、結晶化は困難であると予想される。P1-Fab 結合体の結晶が得られない場合は、クライオ電顕による構造解析を専門家と相談する。 エピトープ解析によって得られた P1タンパク質の13 アミノ酸の配列、および、その近傍の配列を含む抗原タンパク質を複数デザインして作製する。抗原タンパク質でマウスを免疫することによって細胞接着阻害抗体が生産されるか実験を行う。細胞接着阻害抗体が効率よく生産される抗原タンパク質を選び、ワクチン抗原候補とする。マウスへの投与方法はタンパク抗原の投与のみではなく、DNA、RNA核酸ワクチン形式での投与方法も検討する。
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Causes of Carryover |
ここまでの作業は、予想よりも新規の試薬類などを購入する必要がなく実験を進めることができたため。
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