2022 Fiscal Year Research-status Report
ナノボディを用いた O-GlcNAc 修飾異常による悪性中皮腫進展機構の解明
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22K07182
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
向井 智美 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, 研究員 (10706146)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 悪性中皮腫 / O-GlcNAc 修飾 / ヌクレオポリン / 核輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、様々ながんでは翻訳後修飾のひとつである O-GlcNAc 修飾が亢進しており、治療標的としての可能性が注目されているが、O-GlcNAc 修飾の生理学的な意義や腫瘍進展との関連は不明な点が多い。研究代表者は、Hippo 経路の破綻した悪性中皮腫では O-GlcNAc 修飾が著明に亢進することを明らかにし、その主たる標的タンパクとして複数の核膜孔複合体構成因子(ヌクレオポリン)を同定した。既に、ヌクレオポリンは O-GlcNAc 修飾の代表的な標的タンパク質であることが知られており、その修飾部位は百箇所以上にのぼる。近年、ヌクレオポリンの O-GlcNAc 修飾が核輸送の亢進に寄与することが報告されたことから、研究代表者は、Hippo 経路の破綻した悪性中皮腫におけるヌクレオポリンの過剰な O-GlcNAc 修飾が核輸送が活性化され、それに伴う様々な分子の局在異常が腫瘍進展を誘導する可能性を考えている。本年度は、この仮説を検証することとした。核輸送が亢進している場合は、核輸送の阻害に対して脆弱であることが予測される。そこで、ヌクレオポリンの O-GlcNAc 修飾が亢進している悪性中皮腫細胞に対して、核輸送阻害剤の添加や、核輸送受容体のノックダウン等をおこない、細胞増殖や、ヌードマウスに対する造腫瘍能の検証を行った。核輸送阻害剤については、現在最も臨床応用されている薬剤を優先的に利用した。その結果、細胞増殖や造腫瘍能が有意に抑制されたことから、これらの細胞では核輸送の亢進が腫瘍進展に寄与する可能性が示唆された。さらに、核輸送の状態を解析するために、核輸送を可視化する系の構築に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はナノボディを利用してヌクレオポリン特異的に O-GlcNAc 修飾を誘導する系の構築を行うはずであったが、予定を変更して、まずは研究代表者の仮説(Hippo 経路の破綻した悪性中皮腫におけるヌクレオポリンの過剰な O-GlcNAc 修飾が、核輸送の脱制御を誘導する可能性)を検証する実験を行った。その結果、研究代表者の仮説を支持する結果が得られた。 当初予定していた実験計画とは異なるものの、別のアプローチで結果が得られているため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
核輸送を評価する系の構築を引き続き行い、O-GlcNAc 修飾の有無、YAP/TAZ の活性化状態による核輸送の変化を解析する。O-GlcNAc 修飾レベルのコントロールは、阻害剤および、ナノボディを利用したヌクレオポリン特異的な O-GlcNAc 修飾を想定している。 核輸送阻害剤の添加実験の結果から、ある程度、腫瘍進展に関わる因子の候補が得られているので、今後はそれらについて、さらに詳細に解析する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた実験ではなく、別の実験を行ったため、予定額と変更が生じ、次年度に使用額が持ち越された。次年度は、今年度予定していた実験を行う予定で、その際に持ち越し分を使用する。
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