2023 Fiscal Year Research-status Report
最新多角的オミックス解析を用いた慢性活動性EBV感染症の病態解析研究
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22K07211
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 格 京都大学, 医学研究科, 助教 (10610454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今留 謙一 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 高度感染症診断部, 部長 (70392488)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | CAEBV / オミックス解析 / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性活動性EBV感染症(CAEBV)は、EBVに感染したT/NK細胞の形質転換と腫瘍性増殖を特徴とする難治性疾患である。我々は、CAEBV-NK型患者26人について、その遺伝学的特徴を明らかにするため、メチル化アレイ解析、RNAシーケンス、全ゲノムまたはエクソーム塩基配列解析を用いてマルチオミックス解析を行った。 CAEBV-NK型患者検体では、対照患者検体(伝染性単核球症のNK細胞および健康ボランティアからのNK細胞)と比較して、CpGアイランドDNAの過剰メチル化によって特徴づけられていた。特に患者の約3分の1(n=9)は、CpG island methylator phenotype (CIMP)として知られる、より広範な高メチル化表現型を示し、いくつかの癌抑制遺伝子のサイレンシングを認めた。さらには遺伝子変異解析から、CIMP陽性患者はCIMP陰性患者よりもはるかに高い腫瘍遺伝子変異量(Tumor Mutation Burden; TMB)を持っていることが明らかになった。さらに、我々のコホートで病勢進行により死亡した患者はすべてCIMP陽性であり(4/9、44.4%)、CIMP陽性は、CIMPの状態、年齢、性別、移植時期を説明変数としたCox比例ハザード回帰分析において、唯一の有意な予後不良因子であった。 今回初めて、臨床転帰とCAEBVの遺伝的/エピジェネティックな変化との間に明確な相関関係が示された。 免疫不全マウス(NOGマウス)にヒトサイトカイン遺伝子を導入した次世代免疫不全マウスである次世代NOGマウスを用いてCAEBVのPDXモデルの樹立が完了しており、現在明らかにされた特徴を対象としてin vivo試験を実施し論文化を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メチル化アレイ解析、RNAシーケンス、全ゲノムまたはエクソームシーケンスによる多角的オミックス解析は順調に進行している。 シングルセル解析においては既存の遺伝子解析技術と組み合わせることで、さらなる解析に耐えうるレベルにまで検出率を上昇させることが可能となり、単細胞レベルでの感染細胞、非感染細胞の比較が可能となった。また、免疫不全マウス(NOGマウス)にヒトサイトカイン遺伝子を導入した次世代免疫不全マウスである次世代NOGマウスを用いてCAEBVのPDXモデルの樹立も完了している。以上の状況から現在本研究課題は概ね順調に発展していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、CAEBV-NK型患者26名を対象に実施したメチル化アレイ解析、RNAシーケンス、全ゲノムまたはエクソームシーケンスによる多角的オミックス解析を用いて、CAEBVにおける臨床転帰と遺伝的/エピジェネティックな変化の間に明確な相関があることを初めて示した。シングルセル解析においては、10症例という多数症例での検討を行い、EBV感染細胞を高率に同定し、非感染細胞との比較により新たな知見を得ることが出来た。 免疫不全マウス(NOGマウス)にヒトサイトカイン遺伝子を導入した次世代免疫不全マウスである次世代NOGマウスを用いてCAEBVのPDXモデルの樹立も完了しており、同定された臨床的に応用可能な治療標的因子に対する治療モデルを作成し前臨床試験として新規治療開発研究を展開を計画している。
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Research Products
(3 results)