2022 Fiscal Year Research-status Report
微小環境に着目した腎癌骨転移の分子メカニズムの解明
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22K07214
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
江幡 正悟 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (90506726)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腎がん / 骨転移 / 脳転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎がんは罹患数が増加しているがんである。転移を有する進行腎がん症例に対しては分子標的薬も使用されるようになって久しいが、腎がん細胞の転移の分子メカニズムが十分に解明されておらず、他臓器のがんに比べて、分子標的治療の成績は限定的なものにとどまっている。そこで本研究課題では、腎がんの進展のメカニズムを解析するため、ヒト淡明型腎細胞癌細胞(親株)の転移モデルを利用する。心臓移植によって生じた転移性腫瘍から高転移株を樹立し、その特性を解析することで、腎がんの転移に重要な分子メカニズムの同定を目指す。 初年度は、今後の解析対象となるヒト淡明細胞型腎細胞癌細胞高転移株の作成、およびそれらの転移形質の確認を行った。心臓移植の結果、転移性骨腫瘍、転移性脳腫瘍が生じたことが確認できたため、それら腫瘍組織よりがん細胞を単離し、再度移植するプロセスを繰り返すことで、高転移株を作成することを試みた。作成した亜株をあらためて別マウスに対して移植を行い、生物発光イメージングを行うことで、転移先臓器の特異性を確認した。その結果、現在までに骨特異的に転移する高転移株は得られていないが、脳に特異的に転移する“高脳転移株”を樹立することができた。 今後も亜株の作成を継続するとともに、転移能と遺伝子発現プロファイルの相関など、その解析対象の形質の解析を行う。特に転移先の微小環境との相互作用を媒介する分子を同定し、治療標的となるか検討を重ねていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年度は、解析対象となる腎がん細胞高転移株の作成とその転移形質の確認を行った。ヒト淡明細胞型腎細胞癌細胞OS-RC-2の心臓移植の結果、転移性骨腫瘍、転移性脳腫瘍が生じたことが確認できたため、それらよりがん細胞を単離し、再度移植するプロセスを繰り返すことで、高転移株を作成することを試みた。そのうち、転移性骨腫瘍より樹立した亜株は、親株と比較して骨転移能が亢進していたが、同時に脳転移も亢進していることがわかり、骨特異的に転移能を高めているわけではないと判断された。一方で、転移性脳腫瘍より樹立した亜株は、親株と比較して移植回数依存的に脳転移能が亢進していたが、骨転移能の亢進は部分的であったため、高脳転移株であると判断され、今後の解析対象として妥当であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度ではひきつづき、腎がん細胞高骨転移株の作成を目指す。ただし、今年度に得られた高脳転移株は、脳転移の制御機構を解析する対象として有用であることが示唆された。そこで骨転移のみならず、脳転移の分子メカニズムの解明も優先的に行うことができると見込んでいる。具大敵には、RNA-sequencing等により、親株と高脳転移株の遺伝子発現データを取得することを予定する。得られた遺伝子発現データから、高脳転移株の特徴的遺伝子セットの解析を行い、血管内皮細胞など、脳の微小環境を構成する細胞群との相互作用を媒介する分子の同定を目指す。
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