2022 Fiscal Year Research-status Report
個体間リズム引き込み現象を指標とした社会形成の神経基盤解明
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22K07337
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
戸松 彩花 (戸松彩花) 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特任准教授 (00415530)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 運動同期 / 引き込み現象 / ニホンザル / 行動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒトにおいて日常的にみられる「外界のリズムに自己の運動リズムが引き込まれる現象」を非ヒト霊長類において再現し、その神経メカニズムを探ることである。 2022年度は、これまでに本研究のために開発した運動課題によって動物の運動の引き込み現象が観察できることをSociety for Neuroscience 2022においてEnhancement of rhythmic motion entrainment by social contexts in the macaqueというタイトルでポスター発表をした。 この中では、自発的な速度でレバーを往復させる運動を訓練したサルに対し、被験サルの運動よりも①速い②同等③遅い運動をするサルの動画を実物大で提示して、一緒に往復運動を行わせた。被験サルに与えられる報酬は動画と関連させず、被験サル本人の運動に対してのみ支払われた。被験サルは課題運動中に、動画の中のレバー周辺に視線を置くことを求められた。このような環境においては、被験サルの運動は、動画のサルの運動の速さにつられて速度を変調させることが示された。 同様に、実物大のレバーのみが同様の3種類の速さで動く動画を提示しても、被験サルの運動は動画とともに変調した。しかし、その効果はサルの動画より小さかったことから、本効果はどんな視覚刺激でも同じわけではなく、「他のサルと同じ運動課題を行う」という社会的な文脈が強く影響することが示された。 引き込み現象と社会性の形成との関連が論じられる中、本研究で示されたマカクザルの引き込み現象は、その生起メカニズムを探るための大きな一歩である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度までに3頭の動物に課題を訓練済みであり、2022年度は、そのうち2頭から課題運動遂行中のサルの運動前野の神経活動の単一細胞外記録および局所電場記録を予定通りに開始した。しかし2022年6月および10月に1頭ずつ、計2頭が死亡したため、生体同士の引き込み現象中の神経活動データを十分に得ることできなかった。このため2022年11月より新たな動物2頭に課題訓練を施し、2023年度には神経記録を再開する。遅れを取り戻すため、2022年度に取得予定であった単体記録(ペアが実物サルか動画サルかを比較)は以後余裕がある場合に取得するものとして、当面は2023年度の予定である複数個体より同時に神経活動記録を行う準備を整え、年度半ばには記録を再スタートさせたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、引き込み現象中の複数個体の同時神経活動記録をメインに行い、できるだけ多くのデータを記録する。これにより、引き込み現象がどのように発現するかに関する仮説をもち、2024年に薬剤注入による標的脳部位の不活化を行えるよう整える。
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Causes of Carryover |
年度途中に動物が死亡したため、電極や薬品の購入を一時的に見合わせた。これは、実験の準備が進んだため2023年度に再開する。また、COVID-19のため、渡米を見合わせた。これに関しても、2023年度は現地での学会参加を予定している。
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