2023 Fiscal Year Research-status Report
筋炎特異抗体“陰性”筋炎の臨床・分子病理像解析と合併背景免疫の病態への関与の検討
Project/Area Number |
22K07506
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
清水 潤 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (40260492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 暁 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (30771589)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 筋炎特異抗体 / 全身性強皮症 / 臨床像 / 免疫組織化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、筋炎特異抗体陰性の筋炎として、全身性強皮症(SSc)症例の筋障害を検討した。SSc分類基準ACR/EULAR (2013)を満たすSSc症例連続56例(生検39例、非生検17例)と対照群104例(SSc非合併の筋炎連続症例)の臨床像を比較検討した。SScの筋障害の定義は、先行報告に従い四肢筋力低下、血清CK上昇、針筋電図での安静時放電の3所見のいずれかを認めたものとした。平均年齢は56.6歳、dcSSc37例lcSSc19例。平均血清CK値は681 U/L (21~6748 U/L)。筋炎特異抗体の合併例はなく、強皮症3抗体の出現が約6割存在した。針筋電図は76%(35/46)で安静時放電を認めた。筋病理検討では対照群と比較し、炎症細胞浸潤の程度,壊死・再生線維の頻度,HLA-ABCの広がりは有意に軽度であった。また、炎症の乏しい例が7~8割で、筋周膜の炎症、筋線維のHLA-ABC, -DRの発現の程度は2峰性の傾向があった。通常の筋炎と比較し有意差を持ち異なる臨床像として、筋力低下の自覚がない例が4割(39%)、進行性筋力低下の病歴がない例が3割(34%)、筋力低下がない例が約2割(17%)、上肢の筋力低下の近位有意性がない約2割(23%)、下肢筋力正常の例が約3割(28%)、症状がCK上昇のみの例が25%、安静のみでCK正常化例が2割(20%)であり、EULAR/ACRの筋炎合致度はprobable未満が4割を占めた。また、筋力低下がありながら針筋電図正常である筋の7筋全例で免疫組織学的変化が存在した。近年、 SScに伴う筋障害の病態背景として、骨格筋の微小循環障害の存在が注目されている。SScに伴う筋障害例が、筋炎として非典型的な臨床像を高頻度に有することは、通常の筋炎と異なるSSc特有の筋障害機序の存在を臨床の観点より支持する知見と考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は,免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)では半数近くの症例で,筋炎特異抗体“陰性”筋炎でも認める合併抗体が併存していること,IMNMの筋病理像が合併抗体の存在により影響をうけることを明らかにした.2023年度は,筋炎特異抗体“陰性”筋炎の代表として、全身性強皮症(SSc)症例の筋障害を検討し、SScに伴う筋障害では通常の筋炎と異なる筋障害機序が存在することを臨床的観点より明らにした。現在、SScに伴う筋障害例の生検筋を用い、筋障害の機序を検討中である。2023年度の後半は、SScに伴う筋障害例の臨床像解析に時間を要したために、当初、予定していた患者血清と生検筋を用いた試料解析に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で、SScに伴う筋障害症例の生検例の中の7-8割は骨格筋微小循環障害を背景としてSSc-関連ミオパチーであるが、残りの2-3割では炎症性病理がありオーバーラップ筋炎に近い病態であることが明らかになった。SSc-関連ミオパチーとオーバーラップ筋炎は異なる病態と考えられる。2024年度は、現在まで進めているSScに伴う筋障害例の血清と生検筋を用いた試料解析を継続し、すでに抽出済みの臨床因子との関連解析を、統計的手法を用い行っていく。また、今までの研究結果について,学会発表を行ったうえで論文化を進めていく。
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Causes of Carryover |
2023年度の後半は、SScに伴う筋障害例の臨床像解析に時間を要したために、当初、予定していた患者血清と生検筋を用いた試料解析に遅れが生じている。そのため、消耗品を用いての検討をおこなうことができず、次年度使用額が生じた。2024年度は、2023年の予算残額と2024年度の予算額をあわせ、強皮症に伴う筋障害として、SSc-関連ミオパチーとオーバーラップ筋炎の筋炎の検討をすすめていく。強皮症の筋組織における虚血因子、筋線維ストレス因子の解明のために、免疫染色用の抗体を購入し組織を用いた免疫染色をすすめていく。また、血清中の自己抗体検討のために、抗体測定用の市販のキットを購入し検討を進める。検討結果により、効率よく予算を使用していく。
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