2023 Fiscal Year Research-status Report
Influence of neuronal autoantibodies to the onset and recurrence of psychosis
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22K07616
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高木 学 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (60452570)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自己免疫性脳炎 / 自己抗体 / 精神疾患 / 免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳炎症状を欠き精神症状を主症状とする患者の髄液中に神経伝達物質受容体に対する自己抗体が存在し、これら自己免疫性精神病患者に対する免疫療法の有効性が多く報告される。一方で、急性期、慢性期の精神疾患患者の血清中にも、自己抗体が比較的多く存在するが、これら血清中の抗体の産生機序、臨床経過に与える影響は未だ明らかではない。我々は抗NMDA受容体抗体を含む血清中の神経自己抗体が神経発達障害を引き起こすことを報告したが、本研究ではこれらの神経自己抗体が精神疾患の発症や再発の機序にどのように関わるかを解明するために、動物実験を用いた基礎的検討、患者の血清及び髄液を用いた臨床的検討を行い、精神疾患患者への免疫療法の可能性をさらに追及することを目的とする。血清、髄液の抗グルタミン酸受容体(抗NMDARなど)抗体、抗ドパミン受容体(抗ドパミンD2受容体:DRD2など)抗体、抗GABA受容体(抗GABAA, B受容体など)抗体などが、神経発達、精神疾患の発症と再発に与える影響、抗免疫療法の効果を、基礎、臨床両面から検討する。岡山大学病院他施設の約100名の抗体検査を行い、10例(女性8例,男性2例)で抗NMDA受容体抗体が陽性(髄液9例,血清2例)、2名(女性1例,男性1例)でLGI1抗体が陽性(髄液1例,血清2例)であった。他に血清NAE抗体陽性1例、Yo抗体陽性1例、AQP4抗体陽性1例のを認めた。免疫療法を行ったものは大半で症状の改善を認めた。また、日本独自の診断基準である非定型精神病の診断基準を認める患者の10%が抗NMDAR抗体を髄液で保有し、免疫療法が有効であること、加えて、脳波検査で徐波異常を認めた患者では25%に陽性率が上がり、精神科領域で興奮が激しい際などに施行困難な髄液検査を積極的に行う指標となることを報告し、Schizophrenia Researchにアクセプトされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血清、髄液の抗グルタミン酸受容体(抗NMDARなど)抗体、抗ドパミン受容体(抗ドパミンD2受容体:DRD2など)抗体、抗GABA受容体(抗GABAA, B受容体など)抗体が、神経発達、精神疾患の発症と再発に与える影響、抗免疫療法の効果を、基礎、臨床両面から検討することを目的としている。岡山大学病院、他施設より、約100名の検体を受け入れ、抗体検査を行い、抗NMDAR抗体髄液陽性患者10名、血清陽性患者2名、LGI1抗体血清陽性患者2名、髄液1名、抗甲状腺抗体であるNAE陽性患者1名の診断を行い、昨年同様の患者数を集め、検査でも順調に症例数を増やしている。また、既存のサンプルを用い、日本独自の診断基準である非定型精神病の診断基準を認める患者の10%が抗NMDAR抗体を髄液で保有しており、免疫療法が有効であること、加えて、脳波検査で徐波異常を認めた患者では25%に陽性率が上がり、精神科領域で興奮が激しい際などに行いにくい、髄液検 査を積極的に行う指標となることを報告し、Schizophrenia Researchにアクセプトされた。これら患者の臨床症状と抗体価が相関することも報告している。臨床面では検体も集まっており、予定通り順調に進展していると考えている。一方基礎的な実験は抗NMDA受容体抗体を含む血清中の神経自己抗体が神経発達障害を引き起こすことを発見したが、1) in utero遺伝子導入マウスモデルを用いた神経遊走、樹状突起形成、シナプス形成など、脳の発達の検討、2) 妊娠マウス感染モデル、3) モデル動物:① 1)、2)を、精神疾患脆弱性を持ち、かつ液性免疫の異常を来たしやすい可能性を持つモデル動物として、覚せい剤投与やストレス負荷を行った際の反応の違いを観察し、向精神薬投与による改善の違いを調べるなどの実験は今後の課題と考えているため、概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床面では、検体の検査依頼、入院依頼は順調に継続しており、全国で学会や講演を行うことで抗NMDAR抗体脳炎や自己免疫性脳炎の存在について、広く世の中に知ってもらうことで、新しい施設からの検体送付も増えてきている。さらに臨床的な特徴や免疫療法の有効性を検討し、更に臨床治験などにもつなげていきたいと考えている。また、抗NMDAR抗体検査は保険収載される可能性も期待されているがしばらく先のことになりそうであり、今後我々の研究は更にニーズは高まっていくと思われる。加えて、甲状腺抗体が関係する橋本脳症のマーカーであるNAE検査がコマーシャルベースで可能となったこともあり、併せて検査を行っていくことで、自己免疫が関係する精神病の観点で研究の幅を広げていきたい。基礎的検討では、in utero遺伝子導入マウスモデルを用い胎児マウスに各受容体自己抗体陽性の患者髄液を脳室に穿刺注入し、神経遊走、樹状突起形成、シナプス形成など、脳の発達が障害されるかを検討する。妊娠マウス感染モデル、妊娠マウスに各受容体自己抗体陽性の患者血清を血管内投与することで胎児に抗体が移行し、脳の発達が障害されるかを検討する。今まではB細胞が産生する自己抗体による液性免疫が自己免疫性脳炎の分野では主に注目されたが、最近、自己免疫性てんかんや重症金無力症など自己抗体による慢性的な神経障害は、液性免疫は関与せず、T細胞性誘導性の免疫が関与し、脳神経が障害される為に生じるという報告が頻発している。これは、慢性的な精神症状を呈する精神疾患で、血清に自己抗体を所有するだけで精神症状を生じるわけではなく、何らかの機序で細胞性柄免疫が誘導され脳障害を生じ精神症状を呈する可能性があるのではないかと推測している。今後は自己免疫性精神病の検討を足掛かりに、精神疾患におけるT細胞性免疫の関与の可能性について検討していきたい。
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Causes of Carryover |
臨床研究の方は順調に進み消耗品を使用したが、カルチャースライドなどで方法論を工夫することで経費を削減することができた。人件費の方は大学院生などを含めたスタッフで行うことができたため、削減できた。本年度は臨床研究の検体がさらに増えることが予想されるため、消耗品と、データー処理の技師の雇用に充てていく予定である。また、基礎研究を開始するため、マウスの購入費や試薬の購入、行動実験を行うため、そのための消耗品やビデオの購入、技師の雇用に充て、さらに実験を行っていく予定である。加えて、T細胞を髄液にて測定するためのフローサイトメトリーに費用を充てる。
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Research Products
(9 results)