2022 Fiscal Year Research-status Report
予後不良18F-FDG-PET高値膵癌を標的としたホウ素中性子捕捉療法
Project/Area Number |
22K07639
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
金平 典之 岡山大学, 大学病院, 医員 (70939008)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道上 宏之 岡山大学, 中性子医療研究センター, 准教授 (20572499)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ホウ素中性子補足療法 / 膵癌 / CA19-9 |
Outline of Annual Research Achievements |
予後不良とされる膵癌の治療方針として、術前に腫瘍マーカーであるCA19-9を低下させることが重要と考えられるようになってきている。CA19-9を低下させ、多くの症例を根治的切除の方針とするために、術前治療選択肢としてホウ素中性子補足療法(BNCT)を提案する。BNCTの治療効果は、いかに腫瘍特異的にホウ素を導入し、正常細胞への取り込みを抑えられるかに依存する。膵癌は他の癌腫と異なり腫瘍血管が未発達であり、間質性分の造成が豊富である。Drug Delivery System(DDS)で重要なEnhanced Permeabili ty and Retention(EPR)効果を得ることが難しく、高分子DDSをホウ素のDDSで使用することは困難と考える。 我々は膵癌の腫瘍マーカーであるCA19-9と18F-FDP-PET(グルコースPET)に着目し、グルコース輸送体を標的とした新しいホウ素薬剤(グルコース結合ホウ素製剤:Glucose-BSH)を開発し、CA19-9産生膵癌細胞株であるpanc.04.03の皮下腫瘍モデルマウスにおけるGlucose-BSHを用いたBNCTの抗腫瘍効果を調べた。既存のホウ素薬剤であるBSH・BPAと比較して腫瘍サイズ縮小が確認できた。 また、糖鎖であるCA19-9の合成経路に着目し、最終的に転移されるフコースを結合したホウ素製剤(Fucose-BSH)の作製を行った。CA19-9合成経路に着目して、公開データベース(CCLE)やTCGAを利用しながら、実験計画を構築した。 癌腫横断的にCA19-9高値である細胞株(膵癌:BcPC-3, 胆管癌:HuCCT-1,胃癌: GCIY)を用いて、細胞内ホウ素濃度をICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)にて測定した。CA19-9産生細胞株において、Fucose-BSHがより高濃度に取り込まれることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Glucose-BSHのマウスモデルにおけるBNCTの抗腫瘍効果は示された。 CA19-9の合成に着目し新たにフコース結合ホウ素製剤の開発を進めることができた。 このFucose-BSHについても、公開データベース(CCLE)を用いて、膵癌のみならずCA19-9高値となりうる癌種において、利用する細胞株を選定し、ホウ素製剤の細胞内取り込みをICP-MSで評価することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
Fucose-BSHの細胞内取り込みをより評価するために、フコース取り込みを阻害するとされているGLUT阻害剤(cytochalasin B)を用いて、改めてICP-MSでの測定をする。また、培地へのフコース添加によるFucose-BSHの細胞内取り込み阻害も併せて評価する。BSH抗体を用いて、Fucose-BSHの細胞内取り込みを免疫染色においても確認する。 ウェスタンブロッティングにより、細胞株でのフコース転移酵素であるFUT3発現を調べる。 評価ができた細胞株を用いて、Fucose-BSHのBNCTにおける抗腫瘍効果を京都大学複合原子力科学研究所での照射実験で確認する。 Fucose-BSHのBNCTによる抗腫瘍効果をより調べるために、皮下腫瘍モデルマウスにおける照射実験を予定している。実験に際し、モデルマウスにおけるFucose-BSHの薬物動態を確認する。
|
Causes of Carryover |
Glucose-BSHのBNCTにおける抗腫瘍効果確認のためにマウスを購入したが、想定していた照射実験よりも、設備の関係もあり行えず、マウス購入数が当初の予定よりも減ったため。 また、来年度の機器購入を予定しており、今年度の予算を一部購入費用に充てる考えであり、その分使用せずに確保しておいたため。 今後の使用計画は、より適格な細胞株購入と皮下腫瘍モデル作成のためのマウス購入の予定。また、ウェスタンブロッティングで用いる試薬の購入。京都大学複合原子力科学研究所での実験のための交通費に使用する。
|
Research Products
(1 results)