2023 Fiscal Year Research-status Report
免疫ブースト効果によるがんの放射線治療効果向上の試み
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22K07767
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
渡部 明彦 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (20377253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 良平 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (60334736)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バキュロウイルス / ネオ抗原 / がん免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
組み換えバキュロウイルス(rBV)は、EF1プロモーター下にルシフェラーゼ(Luc)遺伝子を配置して、下流側にSV40のPolyA部位を導入した遺伝子カセットをゲノム中に導入したものを設計し、構築を外注し入手した。rBVを増殖するためのヨトウガ由来のSf9細胞を共同研究先から入手した。血清入りのTNM-FH培地を使用し、接着状態で増殖維持した。この細胞にrBVを感染して5日後に回収した培養上清中のrBV力価の測定をrBVの表面抗原gp64に対する抗体を利用した間接蛍光抗体法を確立して実施した。その結果10E+7 pfu/ml程度であった。 rBVによるLucの発現に関してはin vitroでマウスがん細胞に不完全感染(abortive infection)した細胞の溶解液でLucアッセイをおこなったところ発光を検出した。また、同じ溶解液を免疫ブロットで解析したところ抗Luc抗体でバンドを検出した。 その後、条件検討の結果、浮遊状態でもSf9細胞の増殖およびrBV感染が可能となった。感染細胞の振盪培養上清を回収し、ショ糖勾配遠心でrBVの濃縮を試み50 mlの上清から0.5 mlの濃縮液を調製した。力価は5×10E+8 pfu/mlで、動物実験で使用する濃度の約100分の1低濃度であるため改善が必要である。そこで、ThermoFisher社のEpiSF CD培地でこの培地に馴化した細胞の培養を開始したところこれまでの数倍の濃度に達した。現在rBVを感染中。 構築したLucを発現するRenca細胞をBALB/cマウスの背部皮下に注入し腫瘍を形成した。腫瘍は10~14日で直径が5 mm程度にまで達した。この腫瘍にrBVを50 ul接種し、24時間後に腫瘍を回収して溶解し、Lucアッセイを行ったが有意な発光を検出できなかった。接種後のタイミングと接種したrBV力価量の問題だと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
rBVを増殖するための昆虫細胞であるが、動物細胞よりも条件が厳しいようで、特に、液体培養でなかなかうまく行かず、条件検討してうまくいくまでに1月ほどを要した。また、ウイルス感染と増殖は常法に従うことでうまく行ったが、力価測定はきちんとできるまでに時間がかかり2月ほど条件検討が必要であった。最初は寒天培地で培養しニュートラルレッドでの染色でプラークをカウントする実験を実施していたがうまく行かず、抗体を利用した免疫染色でフォーカスをカウントする方法に変えてうまくいくようになった。 遺伝子組換え実験の認可は予定通り5月に承認されたものの、動物実験の認可は7月に入るまで承認されず、準備が予定よりも遅れてしまった。もう少し前から申請を行うべきであったと反省している。 細胞培養とウイルス増殖なので、研究分担者の精通している技術と考えていたが、種類の異なるものを使用する場合、技術的な難易度もかなり異なることを実感した。1年目の遅れを2年目で取り戻すつもりであったが、逆にさらに遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
動物での治療実験の前に腫瘍へのrBVの投与によるLucの発現を確認する必要がある。現状利用できる5×10E+8 pfu/mlほどの力価のウイルスを利用して、腫瘍組織中へのrBVの投与とLuc発現の経時変化についての検討を実施する予定である。これで発現を確認できない場合は、まずはさらに濃縮されたウイルスの取得に注力したいと考えている。 今年度までの検討で、rBVのSf9細胞への感染と力価の測定も確立し、さらにはSf9細胞の高濃度増殖法も確立したので、来年度はrBVの大量調製とその濃縮法の確立が必須である。最終的には1×10E+11 pfu/ml程度の濃縮ウイルス液が必要である。この技術の確立が来年度のネックとなると思われる。早めに検討し、動物実験を開始したい。
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Causes of Carryover |
必要技術の確立の遅れから、もっとも予算を消費すると思われる動物実験を実施できていないことが一番大きな原因であると考えている。初年度から開始する予定であったが、最低限の準備までもう少しかかりそうである。少しでも早く始められる様努力したい。可能であれば3回の動物実験を実施したい。各実験で30匹ずつ合計90匹のマウス(2000円/匹で約18万円)およびマウス飼育用品(餌、床敷、ケージ、その他)および、動物実験用品(試薬、消耗品、放射線照射補助具など、約35万円)に使用する予定である。
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