2022 Fiscal Year Research-status Report
がん特異的糖鎖抗原を用いた小児がんに対する近赤外光線免疫療法の確立:前臨床モデル
Project/Area Number |
22K07884
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長 祐子 北海道大学, 大学病院, 助教 (50507952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真部 淳 北海道大学, 医学研究院, 教授 (20292849)
小川 美香子 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (20344351)
樋田 泰浩 北海道大学, 大学病院, 准教授 (30399919)
植木 将弘 北海道大学, 大学病院, 医員 (30815288)
中島 孝平 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (40907771)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光免疫療法 / 抗GD2抗体 / 神経芽腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗GD2抗体を用いた光免疫療法(以下PIT)が神経芽腫に適用可能か否かを検討するため、in vitroおよびin vivoで基礎実験を行った。はじめに神経芽腫に特異的な抗ヒトガングリオシドGD2モノクローナル抗体(clone 3F8)をIR700とconjugateしこれを抗体-光吸収体(以下APC)とした。実験に使用する細胞株としてGD2を発現するヒト神経芽細胞腫細胞(SK-N-SH)を選択した。in vitro実験では、PITによって誘導された細胞死を顕微鏡およびフローサイトメトリー(FCM)によって調査した。顕微鏡法では、細胞の形態変化の観察及びカルセイン-AMとエチジウムホモダイマー(EthD-1)を用いて生細胞と死細胞を識別した。結果、PIT中に細胞の膨張とブリーブの形成が観察され、これらの細胞の形態変化は以前に報告されたPITによる細胞死と一致するものであった。またFCMでは死細胞をヨウ化プロピジウムで標識し標識された細胞の割合を評価したが、このFCMを用いた定量化でも死細胞の割合が有意に増加したことが示された。このことから抗ヒトガングリオシドGD2モノクローナル抗体(clone 3F8)とIR700のconjugateさせたAPCは、少なくともin vitroでGD2を発現する神経芽腫細胞の細胞死を誘導しうることが示された。次にin vivo実験としてSK-N-SH-Tumor搭載マウスを作成し、PIT群と非治療群(コントロール群)の2つに分け観察した。PIT群ではマウスに100mcgのAPCを静脈内注射したのち100J/cm2の光照射を行った。治療効果を組織学的に評価するため、治療後1日目に腫瘍を切除したところPIT群マウスのみ組織学的に腫瘍組織の破壊が確認された。以上のことから、抗GD2抗体を用いた光免疫療法は神経芽腫に有効である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は代表的な小児がんであり予後不良とされる神経芽腫及び骨肉腫に対して、これが腫瘍組織が高頻度に発現しているヒトガングリオシドGD2をターゲットにした光免疫療法が適用可能かどうかを検証することである。GD2を発現した神経芽腫細胞株を用いた実験は、in vitroでその効果が確認でき、さらに次のステップとしてマウスを用いた異種腫瘍移植モデルでも評価を始めており、概ね順調に進展していると考えられる。ただし、まだin vivo実験が十分なモデル数で行われたとは言えず、次年度繰り返し検証を試みる必要がある。また、もう一つの小児がんである骨肉腫細胞株を用いた実験も同様のステップを踏んで進める必要があり、次年度の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、神経芽腫細胞株の搭載マウスに対するin vivo実験を継続しデータを蓄積することにより、抗ヒトガングリオシドGD2モノクローナル抗体(clone 3F8)とIR700のconjugateさせたAPCの有用性と安全性につき、より信頼性のある評価を導き出す。異種腫瘍のためかマウスへの移植が不成功に終わることを経験しており、移植条件についてはさらなる検討が必要である。これら実験系が確立したのちには、GD2を発現している骨肉腫細胞株でも神経芽腫細胞株と同様のin vitro並びにin vivo実験を進め評価する。さらに各々の疾患について、GD2を発現する複数の細胞株で実験を行うことも、抗ヒトガングリオシドGD2モノクローナル抗体(clone 3F8)とIR700のconjugateさせたAPCの汎用性の有無を確認する上で重要と考えられる。またPITには局所の腫瘍細胞死を誘導するだけでなく、その生体に抗腫瘍免疫を誘導するという報告もあるため、PITが行われたマウスの免疫関連細胞や分子について解析を行うことも計画する。可能であればGD2の発現を増幅させたり、免疫機能を就職するような薬剤、腫瘍細胞死のシグナル経路に修飾を与える薬剤との併用効果についても検討できると良い。
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Causes of Carryover |
抗ヒトガングリオシドGD2モノクローナル抗体(クローン3F8)の供与を他施設の研究者より受けることができたため、消耗品購入費用が予定より減少した。またコロナ禍により国際学会・国内学会での研究情報収集に制約があり旅費も予定より減少した。次年度はこれらを、マウスモデル作成や複数の細胞株の購入費用、免疫関連解析費用、免疫関連研究試料の購入費、情報収集及び発表のための学会参加費用、論文投稿費用などに充てる計画である。
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