2023 Fiscal Year Research-status Report
ステロイドホルモンを用いた新生児低酸素性虚血性脳症に対する画期的治療法の研究
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22K07904
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Research Institution | Institute for Developmental Research Aichi Developmental Disability Center |
Principal Investigator |
田中 基樹 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 障害モデル研究部, 主任研究員 (90584673)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 新生児低酸素性虚血性脳症 / プロゲステロン / 神経保護作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プロゲステロン受容体アゴニストnestoroneが新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)に対する有望な新規治療薬になり得るのではないかと考え、HIEモデルラットを用いてnestoroneの有効性を検証している。2023年度に得られた主な実績は以下の2点である。 (1)HIE処置から1週間後までnestoroneを皮下投与し、HIE処置4ヶ月後の認知機能を新規物体認識試験により調べた。オス、メス共にHIE処置によって試験の成績は大幅に低下していたが、nestoroneの投与によってその機能障害は有意に改善された。一方HIE未処置のラットにおいては、nestoroneは試験成績に有意な影響を及ぼさなかった。以上の結果は、nestoroneはHIE後の認知機能障害を改善する働きがあるとともに、その機能に対する有害な副作用はないことを示唆している。 (2)Nestoroneによる脳保護作用の機序を解明するために、HIE後の神経炎症に対する作用を調べた。HIE処置48時間後に活性化アストロサイトのマーカーであるGFAP及び活性化ミクログリアのマーカーであるCD68の発現を免疫組織化学染色によって解析した。その結果、GFAP及びCD68は共にHIE処置によって顕著に増加していたが、HIE処置後のnestorone投与はそれらの増加を有意に抑制した。この抑制効果は、オス、メス両方で観察された。以上の結果より、nestoroneのHIEに対する脳保護作用は、抗神経炎症作用を介したものであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた実験を予定通り行うとともに、その結果は、nestoroneがHIEに対して有望な新規治療薬であることを示すものであった。また本研究をさらに発展させるためのデータも得た。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の結果から、nestoroneはHIE処置後の認知機能障害を改善させる作用があることが示唆された。これまでの解析から、nestoroneはHIE処置後の脳組織損傷を有意に軽減させることも分かっており、損傷部位が小さくなったことで、HIE後の認知機能低下が抑えられた可能性がある。一方、nestoroneが生存組織の機能を増強することで、認知機能低下を抑えている可能性を示唆するデータも得ている。そこで2024年度では、電気生理学的手法を用いて、HIE処置後の脳組織のシナプス伝達及び可塑性を調べ、nestorone投与群と溶媒投与群との間に差があるか否かを解析する。 またnestoroneによる脳保護作用の機序の一つとして、活性化アストロサイト及び活性化ミクログリアの抑制作用があることが示唆されている。どのようなシグナル伝達系を介して、アストロサイト及びミクログリアの活性化を抑制しているのか、先行研究を基に、調べていく予定である。
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Causes of Carryover |
学会参加の際、安価な宿泊施設や交通手段を用いたことから旅費が抑えられた。また実験が計画通り進んだことから、使用動物数が削減でき、残額が生じた。実験動物や実験資材の価格はここ数年上昇傾向にあることから、次年度の消耗品購入に充てる。
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Research Products
(2 results)