2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K07924
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
磯崎 春菜 関西医科大学, 医学部, 助教 (00809957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 美樹夫 関西医科大学, 医学部, 講師 (10368251)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脊髄髄膜瘤 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄髄膜瘤は妊娠早期に行われる神経管の閉鎖が何らかの理由で障害され、開いたままになってしまうことで生じる奇形である。ヒトの神経管は神経版に縦に長い神経溝が生じ、側面は神経ヒダとなる。左右の神経ヒダが融合して神経管を形成する。神経管は頸胸椎レベルをはじめに、頭頂部、前頭部、後頭部そして、尾側の順に形成される。尾側の閉鎖は胎生27日ごろに起こるが、閉鎖ができなかったときに、脊髄髄膜瘤が生じる。その理由として、神経管の形成が障害されて起こる、形成不全説が考えられている。環境因子としては、母体による葉酸の摂取が脊髄髄膜瘤の発生率を低減させることは知られている。厚生労働省では、神経管閉鎖障害のリスクを低減するために、1日あたり400 μgの葉酸を摂取するよう呼びかけている。神経管の閉鎖は、妊娠が判明する胎生27日ごろに生じ、発生の異常もこの時期に一致しているため、妊娠に気づく前の段階から葉酸を十分に摂取する必要がある。葉酸が神経管の閉鎖にどのような役割を果たしているのかは不明なままであるが、葉酸の代謝経路や受容体が関わっている可能性がある。葉酸の代謝に関わるメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素をコードするMTHFR遺伝子の異常が、脊髄髄膜瘤との相関を示唆する報告もある。また、抗てんかん剤であるバルプロ酸の内服が脊髄髄膜瘤のリスク上昇につながることが報告されている。本研究は、52名の二分脊椎症の患者の全ゲノムを解析し、転写因子をコードする遺伝子を同定した。そして、レポーターアッセイを用いて、転写活性を亢進させることができる栄養素を探索した。その結果、二分脊椎症の原因遺伝子がコードする転写因子の活性を亢進させる可能性がある6つの栄養素を明らかにした。栄養素の機能を踏まえて、葉酸と相乗効果を示す併用による脊髄髄膜瘤の予防法の確立が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
二分脊椎症の原因遺伝子がコードする転写因子の活性を亢進させる可能性がある6つの栄養素を明らかにした。栄養素の機能を踏まえて、葉酸と相乗効果を示す併用による脊髄髄膜瘤の予防法の確立が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、8種類の候補遺伝子から1つの転写因子のみを解析したため、脊髄髄膜瘤の責任遺伝子は不明のままである。この転写因子が調節する遺伝子を同定できていない。転写因子を発現させた細胞における遺伝子発現解析により、それらの遺伝子を明らかにする必要がある。6種の栄養素は転写活性を亢進させる傾向を示したが、単独投与で有意ではなかった。それら栄養素の機能を踏まえて、葉酸との最適の併用投与法を検証する必要がある。
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Causes of Carryover |
予定よりも少ない試薬を用いて効率よく実験を遂行できたため、次年度使用額が生じた。消耗品費(レポーターアッセイ)に充当する。
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Research Products
(12 results)