2022 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患の発症に関わる腸管・膵臓免疫ネットワークの解明
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22K07996
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
渡邉 智裕 近畿大学, 医学部, 准教授 (40444468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 正俊 近畿大学, 医学部, 教授 (10298953)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自己免疫性膵炎 / 腸内細菌 / 形質細胞様樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫性膵炎は自己免疫を背景に生じる膵臓の慢性炎症性疾患である。臨床病理学的解析により、自己免疫性膵炎の大半が全身性のIgG4関連疾患の膵臓表現型であることが明らかになった。我々は自己免疫性膵炎モデルマウスとヒト自己免疫性膵炎の臨床検体を用いることにより、I型IFNとIL-33を産生する形質細胞様樹状細胞 (plasmacytoid dendritic cells, pDCs)を自己免疫性膵炎の病的細胞であることを見出した。さらに、pDCsの活性化には腸内細菌に対する免疫反応が関与することを明らかにした。しかしながら、自己免疫性膵炎の発症に関わる腸内細菌については未解明であった。本研究では自己免疫性膵炎の発症に関わる病的細菌の同定に取り組み、以下の事実を見出した。 1) Dextran sodium sulfate (DSS)の飲水による腸管バリアの破壊により、膵臓に移行する腸内細菌が増加する。2) 腸管バリアの破壊により、自己免疫性膵炎は悪化する。その効果はI型IFNとIL-33を産生するpDCsの膵臓への集積を伴う。3) 腸管バリアを破壊され、重篤な自己免疫性膵炎を発症したマウスの膵臓へはStaphylococcus Sciuriが集積していることが次世代シークエンス解析により明らかになった。4) Staphylococcus Sciuriのみを定着させたノトバイオートマウスを作成したところ、自己免疫膵炎に対する感受性が増加していた。その効果はI型IFNとIL-33を産生するpDCsに依存していた。
以上の結果から、腸管バリアの破壊に伴い、膵臓へ移行するStaphylococcus SciuriがpDCsを活性化することによって、自己免疫性膵炎を引き起こすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己免疫性膵炎モデルマウスにおいて、病的細菌の同定に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
自己免疫性膵炎モデルマウスにおいて、発症に関わる腸内細菌としてStaphylococcus Sciuriを同定することができた。しかしながら、本菌による自己免疫性膵炎の発症メカニズムは解明されていない。本菌がヒトの自己免疫性膵炎の発症に果たす役割について、明らかにする。さらに、本菌がどのようなメカニズムによりpDCsを活性化するのか?その詳細についてもToll-like receptorのシグナル伝達経路に着目して解析を進める。さらに、pDCsが膵臓で直接活性化されているのか?あるいは腸管で腸内細菌を認識し、活性化され、膵臓に移行するのか?そのどちらであるのか解明に取り組む。後者については、すでにpDCsがCCR9-CCL25経路を利用することを発見しているが、ケモカインに着目した解析を行う。これらの取り組みを通して、膵臓―腸管免疫ネットワークの解明を通した自己免疫性膵炎の病態解明と新規治療法開発を推進する。
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