2023 Fiscal Year Research-status Report
心筋細胞と心筋線維芽細胞の相互作用に着目した拘束型心筋症・心室拡張障害の病態解明
Project/Area Number |
22K08101
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小垣 滋豊 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (00311754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 秀和 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50467552)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 拘束型心筋症 / 心筋線維芽細胞 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
当院にて心臓移植を受けた小児拘束型心筋症(RCM)患者の血液細胞からトロポニンI遺伝子に既知の病原性バリアントをヘテロ接合で有するiPS細胞株を樹立した。このiPS細胞株に対して、CRISPR/Cas9システムを用いることで、トロポニンIの変異を修復したiPS細胞株(Isogenic corrected line)と、ホモ接合体にした株(Homo line)を作成した。すべてのiPS細胞株は同様に心筋細胞への良好な分化誘導が可能であった。 これらの細胞株を心筋細胞へと分化誘導したのちに、心筋細胞の収縮および拡張能をモーションアナライザーを用いて解析したところ、RCM株とHomo株において、有意に拡張能の低下を認めた。一方で、トロポニン複合体の形成や、電子顕微鏡によるサルコメアの形態学的な異常は認められなかった。これは患者の心室筋の表現型と同じであった。RNA-seq解析では、接着因子シグナルやTGFβシグナルに異常を認め、心筋拡張能の低下に関与している可能性が示唆された。ここまでの成果は、Journal of the American Heart Association誌に発表した。 次に、健常の心筋線維芽細胞と共培養を行った。これはインサートを用いたindirect co-cultrue系で行った。48時間の共培養の後、心筋線維芽細胞のRNA-seqを行ったところ、ヘテロ接合体である患者iPS細胞由来心筋細胞と共培養した心筋線維芽細胞は、その発現パターンが、isogenic corrected iPS細胞由来心筋細胞と共培養した心筋線維芽細胞や、共培養を行っていない線維芽細胞と比較して、かなり異なっており、またこの差異はHomo -iPS由来の心筋細胞と共培養した心筋線維芽細胞ではより顕著であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RCM-iPS細胞の樹立および、isogenic lineの構築、またそれらの心筋細胞への分化誘導は大変効率よく行うことが出来ている。また、共培養実験についても順調に行っており、RCM-iPSC由来心筋細胞や、ホモ接合体に遺伝子改変したiPS細胞由来心筋細胞と共培養した心筋線維芽細胞では、網羅的遺伝子発現プロファイルが有意に変化することを示すことが出来ている。成果の一部についてはすでに論文発表まで行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
RCM-iPS細胞由来の心筋細胞や、CRISPR/Cas9によって遺伝子改変を行いトロポニンI変異を修復したisogenic lineや、ホモ接合体にしたlineを由来とする心筋細胞を、健常の心筋線維芽細胞と共培養を行い、RCM-iPS細胞由来心筋細胞と共培養した心筋線維芽細胞はその遺伝子発現プロファイルが変化していることが確認できている。次には、これら発現パターンが変容した心筋線維芽細胞を、逆に健常iPS細胞由来の心筋細胞と共培養することで、健常心筋細胞の収縮能や拡張能が変化するかどうかを現在検証中である。プレリミナリー実験では、心筋細胞拡張能に悪影響を与える可能性が示唆されている。これにより、心筋細胞と心筋線維芽細胞の相互作用が、双方向性であるのかどうかを検証する。 また、これまでの我々の研究により同定されている、心筋線維芽細胞の拡張能を悪化させうる液性因子について、これらの阻害薬あるいはリコンビナントタンパクを培地に添加することで、心筋細胞の拡張能が改善するかどうかについての実験を行い、具体的にどのシグナル経路、どの分子が、心筋細胞の拡張能増悪に大きく寄与しているのかを明らかにする。
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