2022 Fiscal Year Research-status Report
抗PD-1抗体への獲得耐性に関わる候補分子CD109とCD276の機能解析
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22K08374
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松澤 高光 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (40568028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪爪 隆史 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (80334853)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メラノーマ / 抗PD-1抗体 / 腫瘍特異的CTL / バイオマーカー / CD276 / CD109 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者らの研究グループはこれまでに、抗PD-1抗体の耐性に関わる分子機構 (逃避機構) を、臨床的に治療抵抗性となった病巣より採取したメラノーマ特異的T細胞とメラノーマ細胞の解析によって解明してきた。頻度の高い代表的なものは腫瘍のMHC class I消失であるが、それ以外の機序の多くは不明である。代表者らのグループはMHC class I消失以外の逃避機構をin vitroで人工的に誘導するin vitro実験システムを開発した。その結果として、免疫エスケープに関わる新規候補分子2つ (CD109, CD276) を同定した。CD109はメラノーマにおいて、CD276はそれ以外の多くのがん種において、腫瘍細胞での過剰発現が報告されているが、我々の実験システムではT細胞によって攻撃を受けたメラノーマ細胞において、発現が顕著に低下していた。現在メラノーマ細胞上のCD109, CD276のヒト腫瘍特異的T細胞活性に対する作用は不明である。本研究ではCD109とCD276について、抗PD-1抗体の治療抵抗性バイオマーカーとしての可能性、ヒト腫瘍特異的T細胞における機能、また治療抵抗性を克服するための治療標的としての可能性、を当研究グループ独自のin vitro実験系および抗PD-1抗体投与を受けた患者に由来する臨床データと紐づけられた多数の組織検体(100例)の免疫染色によって検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1, 約100例のメラノーマ細胞、組織におけるCD276の免疫染色、および抗PD-1抗体治療効果、予後との関連解析 メラノーマ細胞上のCD276の発現レベルが、実臨床における抗PD-1抗体に対する治療抵抗性と関与するのかどうかを検証するため、抗PD-1抗体による治療を受けた患者に由来する腫瘍組織(100例)を用いて、CD276の免疫染色を実施した。その結果、治療前組織におけるCD276発現レベルが高い群の抗PD-1抗体治療後の無増悪生存期間と全生存期間は、低い群と比較して優位に不良であった。 2, メラノーマ細胞におけるCD109, CD276ノックアウトによる特異的T細胞からの認識の変化の確認 共培養実験によって、CD109とCD276の発現はメラノーマ細胞が腫瘍特異的T細胞に暴露されるに従って低下することが示された。この発現低下がT細胞による認識に直接影響するかどうかを検証した。3組のメラノーマ細胞株とそれに反応するT細胞のペアを用いて、メラノーマ細胞のCD109,CD276 をCRISPR Cas9システムによってノックアウトし、その際のT細胞による認識の変化を検証した。CD109についてはノックアウトによってT細胞による認識、細胞障害の程度が有意に減弱し、CD276については有意に増強された。以上より、CD109については腫瘍特異的T細胞による腫瘍認識、細胞障害を増強させる作用、CD276については減弱させる作用が示唆された。 以上のように、CD276についての解析は概ね計画通り順調に進んでいる。一方でCD109についての免疫染色はまだ条件検討の段階であり、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りに、メラノーマ細胞上のCD276, CD109が腫瘍特異的T細胞の機能に与える影響について、さらに多くの腫瘍特異的T細胞とそれに認識されるメラノーマ細胞のペアを用いて検証する。またCD109については免疫染色がまだ進んでいないが、これまでに特異性の高い免疫染色を成功させてきた、wild type細胞株とノックアウト細胞株のセルブロックを使った条件検討により、特異的染色パターンとその条件が判明したところである。そのため、来年度以降でCD109についても実臨床における抗PD-1抗体に対する治療抵抗性との関連が明らかとなる見通しである。また、来年度以降で、未だ明らかにされていないCD276, CD109がT細胞の機能に干渉する機序について、in vitroでの検証を開始する。分担者の猪爪教授の指導のもと、CD271, CD155など多く分子について機能を解明してきた実験系を利用するので、遂行に関する技術的な問題はない。
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