2023 Fiscal Year Research-status Report
炎症性サイトカインによる腸管上皮細胞の再生誘導の解析
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22K08469
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Research Institution | National Hospital Organization, Kyushu Medical Center (Clinical Institute) |
Principal Investigator |
高嶋 秀一郎 独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 血液内科医師 (70622116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊繁 吉謙 九州大学, 大学病院, 講師 (40619706)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | GVHD / 同種造血幹細胞移植 / 腸管オルガノイド / IFN-gamma / MYC / STAT1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は同種造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)における炎症性サイトカインによる腸幹細胞を介した上皮再生の証明を目的とする。 先行して実施した腸管オルガノイドを用いた検討でGVHDにおける代表的な炎症性サイトカインであるインターフェロンガンマ(IFNg)が腸管上皮の増殖を刺激し、その効果は腸管上皮のStat1とMycの発現に依存することを明らかにした。初年度はStat1欠損マウスから腸管オルガノイドを作成し、IFNgを加えて遺伝子発現を評価、IFNgによる腸管上皮増殖がIFNg→STAT1→MYC→CCND1の経路に従って生じることを示唆する結果を得た。昨年度は腸管上皮におけるStat1とMycの関係性を明らかにするため腸幹細胞を純粋培養したintestinal stem cell (ISC)コロニーを作成して実験を行った。ISCコロニーにIFNgを加えてStat1に対するクロマチン免疫沈降を実施、得られたDNA断片を解析したところ、Myc遺伝子の上流で潜在的にStat1が結合しうる領域が濃縮されていることがわかった。この結果は腸幹細胞においてStat1が直接Myc遺伝子の上流の発現制御領域に結合することを示唆する。 また、マウスモデルを用いた先行研究ではGVHD発症時、増殖が盛んな腸管上皮の陰窩領域にc-Mycの発現向上を認めた。初年度はStat1欠損マウスに移植実験を実施、同種移植後の陰窩領域のc-Mycの発現亢進がStat1に依存することを明らかにした。昨年度は発現亢進したc-Mycの機能的な役割を評価するため移植後のマウスに選択的Myc阻害剤の投与を行って解析を進めた。同阻害剤の投与は腸管GVHDにおける組織障害指標である陰窩の減少や病理スコアを有意に増悪させた。この結果はc-Mycを介した腸管上皮の増殖・再生が腸管GVHDの改善に寄与する可能性を示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で検証すべき仮説として設定した腸管上皮細胞におけるIFNg-Stat1-Mycのシグナル伝達経路に依存する細胞増殖についてマウス腸管オルガノイドを用いたin vitroの実験ではすべての実験を終了し、仮説を証明することができた。マウスモデルを用いたin vivoの実験ではGVHD発症マウスの腸管上皮におけるc-Mycの機能的な役割についての検証を残すのみである。当初、この検証はMycの半欠失マウスを使用する予定であったが、同マウスの作成が遅延したため代替手段として選択的Myc阻害剤の投与を行う方法へと切り替え、順調に実験を進めることができている。最後にヒト検体を用いた腸管GVHDを発症した腸管上皮のMYC発現の検証については検体の集積が進みつつあり、解析手法の確立を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では(1)マウス腸管オルガノイドを用いた検証、(2)同種造血幹細胞移植マウスモデルを用いた検証、(3)ヒト臨床検体を用いた検証を予定していた。 (1)腸管オルガノイドを用いた検証は昨年度までに予定していた研究をすべて終了した。 (2)マウスモデルを用いた検討ではGVHDを発症したマウスの腸管上皮における(c-)Mycの機能的な解析を進める。昨年に引き続き移植後のマウスに選択的MYC阻害剤の投与を行ってその効果を検証するアプローチで実験を実施する。具体的には選択的MYC阻害剤の投与が腸管上皮細胞の増殖活性やGVHD生存率に与える影響を検証する。また当初予定していたMycの半欠失マウスの作成が遅延しているが、可能であれば同マウスを用いた解析も進めていきたい。 (3)ヒト臨床検体を用いた検証については引き続き検体の収集を進め、解析手法の確立に努める。
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Causes of Carryover |
本研究課題については使用期限の関係から他の研究費助成を優先して使用しため次年度使用額が生じた。次年度については次年度使用額の使用を見込んでマウスの購入や維持、研究試薬の購入などを計画しており研究機関として設定した3年間を通して予定通りの研究費を要する見込みである。
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