2022 Fiscal Year Research-status Report
Novel agents targeting DNA repair pathway regulated by protein arginine methyltransferases in myeloid neoplasms
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22K08480
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
糸永 英弘 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (70530442)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 骨髄性腫瘍 / タンパク質アルギニンメチル化酵素 / DNA損傷修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はタンパク質アルギニンメチル化酵素の1つであるCARM1は骨髄性腫瘍の発症および薬剤抵抗性に関与していることが報告されているが、その機序については明らかになっていない。研究代表者は、骨髄性腫瘍におけるCARM1のDNA損傷修復機構への作用に注目し、抗がん剤としてのCARM1阻害剤の開発を進めることを目的としている。研究代表者は、先行研究としてCARM1と相互作用を有するタンパク質の網羅的な検索を行った。網羅的な解析により、CARM1はDNA損傷修復機構の中心的な役割を有する複数の因子と相互作用を有することが明らかにした。この解析結果の一部は2022年に米国血液学会で報告した。この網羅的解析の結果については論文投稿の準備を進めており、本年度中の公表を目指している。 そして、CARM1とDNA損傷修復機構の解析については更に詳細な解析を進めている。この研究課題は米国の研究室との共同で行う計画としており、Sylvester Comprehensive Cancer Center, University of MiamiのStephen Nimer教授からの試薬の提供を受ける。2022年度の重要な成果として細胞株を用いた分子生物学的解析のための試薬提供について正式に契約が成立した。また、骨髄性腫瘍患者の骨髄検体を本研究で用いるために共同研究機関(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)を新たに増やし、利用についての倫理委員会の承認および検体を入手した。 このように2022年度は研究を進めるための基盤作りが主であり、研究の進捗状況は概ね順調である。2023年度の推進策としては細胞株を用いた分子生物学的解析を進めるとともに、患者検体を用いた検証も行うため共同研究機関との連携を深めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主軸となるCARM1発現ベクターの構築とCARM1阻害剤を入手するための取り組み、CARM1阻害剤の有効性を報告することが2022年度の主な取り組みであった。具体的なこととして、第一に、これらの研究試薬を当施設に提供してもらうために、Sylvester Comprehensive Cancer Center, University of MiamiのStephen Nimer教授と長崎大学病院・糸永英弘の間でUniform Biological Material Transfer Agreement (UBMTA)を締結した。海外とのUBMTA締結は長崎大学病院では初めてであることもあり、時間を要した。このUBMTA締結により供与された試薬に関して利益相反を明確にすることが出来た。第二に、供与された研究資材としてタンパク質発現ベクターの構築を完了し、ヒト血液細胞におけるCARM1および相互関係を有するタンパク質の過剰発現システムを築くに至った。さらに、CARM1と他の蛋白質の相互関係を網羅的に解析するための近位依存性ビオチン標識(BioID)法に用いることが出来るベクターも含まれているため、今後の解析の基盤となる試薬が整ったといえる。第三に、骨髄性腫瘍におけるCARM1と相互関係を有する蛋白質の網羅的解析の結果とそれを基盤として得られた研究成果を2022年12月に米国(ニューオリンズ)で開催された第64回米国血液学会でポスター発表を行った。特にStephen Nimer教室で開発しているCARM1阻害剤が骨髄性腫瘍に有効であることも報告し、学術的に大きなインパクトを与えた。このように、2022年度は骨髄性腫瘍におけるCARM1の意義を解明するための基盤作りとして概ね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に取り組む推進方策としてヒト患者検体でのCARM1の発現量を評価することである。この点については、米国のMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのRoss Levine教授の研究室との共同研究を検討している。そこで、骨髄性腫瘍として急性骨髄性白血病と骨髄増殖性腫瘍の骨髄検体の提供を受ける予定である。細胞株を中心とした本研究計画であるが、患者検体での検証が可能となれば研究成果の汎用性と堅牢性を高めることに繋がり、学術的なインパクトが大きくなる。さらに、これらの患者検体は網羅的な遺伝子解析情報が付与されており、遺伝子変異の型とCARM1発現量の相関関係を評価することが可能となり、骨髄性腫瘍の病型・遺伝子型との関連性に重要な知見を見出すことが期待される。 そして、本研究では細胞株を用いた分子生物学的検討のためMALDI-TOF/TOFを用いた質量分析によるタンパク質-タンパク質相互関係の解析を確立する。この解析には長崎大学医学部生体高分子解析支援部門・増本博司講師とともに行うことを予定している。 また、本研究では骨髄性腫瘍に対してCARM1阻害剤の効果を検証する予定としている。これまでの先行研究で試行されたCARM1阻害剤としてEPZ025654とEZM2302がある。現在は臨床応用を目指して、Stephen Nimer教授とともに新しいCARM1阻害剤の開発に取り組んでいる。この新規のCARM1阻害剤が使用可能となれば本研究でも用いることを検討しており、CARM1阻害剤の臨床応用への開発を進めていく。
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Causes of Carryover |
2022年度に①MTA締結に時間を要したこと、②共同研究機関の質量分析器の新規機器の納入が遅れたことがあり、組み換えタンパク質を用いた解析が計画よりも遅れた。組み換えタンパク質の精製に関しては企業との協議を重ねており、次年度中に購入する予定である。また、患者検体の入手に関しても時間を要した。患者検体の入手が確定した後に解析用の抗体試薬の購入を予定していたこともあり、2022年度の購入に至らなかった。つまり、2022年度で購入予定としていた試薬を2023年度に購入することとなり、研究費を持ち越すこととなった。
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] ATL に対する HLA 半合致移植後における HTLV-1 ウイルス量とクローナリティの推移2023
Author(s)
糸永 英弘, 澤山靖, 勝岡 真一, 古本 嵩文, 松本 成良, 佐々木大介, 山田 悠一, 藤岡真知子, 坂本光, 加藤 丈晴, 長谷川, 寛雄, 今泉 芳孝, 柳原 克紀, 宮﨑 泰司
Organizer
第45回 日本造血・免疫細胞療法学会総会
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[Presentation] The NLRC4 Inflammasome Drives Myelodysplastic Syndrome By Linking Epigenetic Reprogramming and innate immune Signaling2022
Author(s)
Chuan Chen, Na Man, Francesco Tamiro, Krystal Hossack, Julio Poveda, Daniel Bilbao, Gloria Mas, Stephanie Duffor, Concepcion Martinez, Hidehiro Itonaga, Fan Liu, Jennifer Chapman-Fredricks, Stephen Nimer
Organizer
64th American Society of Hematology annual meeting and exposition
Int'l Joint Research
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[Presentation] Transplantation of BM as compared with PBSC from HLA-identical relatives in adults with MDS2022
Author(s)
糸永英弘, 青木一成, 土岐典子, 小澤幸泰, 福田隆浩, 片岡圭亮, 河北敏郎, 上田恭典, 諫田淳也, 熱田由子, 宮﨑泰司, 石山謙
Organizer
第84回日本血液学会学術集会
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[Presentation] The use of low-dose ATG in fludarabine/busulfan (FB4) improve outcomes in UR-HCT for MDS2022
Author(s)
藤岡真知子, 糸永英弘, 中澤英之, 小澤幸泰, 加藤淳, 池田宇次, 賀古真一, 松岡賢市, 神田善信, 一戸辰夫, 熱田由子, 宮﨑泰司, 石山謙
Organizer
第84回日本血液学会学術集会