2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a method to specifically kill multidrug-resistant bacteria that produce sex pili
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22K08592
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Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
川野 光興 中村学園大学, 栄養科学部, 准教授 (00455338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鹿山 鎭男 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 室長 (50432761)
近藤 恒平 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 研究員 (60896554)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バクテリオファージ / 薬剤耐性菌 / アンチセンスRNA / ファージセラピー / 抗菌法 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルバペネマム耐性腸内細菌科細菌 (CRE) による感染は、効果的な抗菌薬が限定されるため対処が困難であり、世界的に問題となっている。近年、CREに対するファージセラピーの期待が世界的に高まり、実際に臨床現場での実施・成功例が報告され始めている。一方、日本では臨床現場においてファージセラピーを実施した報告はなく、ファージセラピーのためのファージライブラリー構築においても発展途上の段階である。本研究では、これら多剤耐性菌を限定的に殺菌することを目指し、性線毛を感染の受容体とするファージの取得に取り組んでいる。 今年度は、性線毛特異的ファージスクリーニングに用いる各種接合伝達プラスミド (IncP-1, IncHI1, IncN1, IncFII) を保有する大腸菌種を取得した。さらに、N型およびH型の性線毛産生菌に感染できるファージを獲得した。それらの性線毛産生大腸菌を用いて、性線毛特異的に感染するファージの探索を行った。 さらに、多剤耐性肺炎桿菌に感染するファージのゲノム解析を行い、10種類のファージからなるファージカクテルを作成し感染実験およびファージ耐性化実験を行った。耐性菌のゲノム配列解読によるSNP解析により、capsular polysaccharide合成遺伝子であるcpsAにフレームシフト変異が生じていることを確認した。従って、耐性菌の出現は細胞表層に存在するcapsular polysaccharideの変化によるファージの吸着能の喪失によってもたらされたことが示唆された。また、capsular polysaccharideの変化によって細胞表層の構造にも違いが生じた結果、カクテル中の複数のファージが新たな変異株に吸着可能となり、感染が成立するようになったと考えられる。これらの研究は、ファージセラピーを行う上でファージカクテルを用いる際の基盤的な知見になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年4月に大学を移動したため、前学期および後学期の授業期間中は新しい授業・実験科目の準備と講義で忙殺された。実験室も全く整備されていなかったため、フリーザーや小型遠心機などの機器を購入する必要があった。着任初年度であったため、卒業研究論文作成のための学生配属や研究補助員もおらず、人手がなく実験を効率的に行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き各種性線毛産生菌に特異的に感染するファージの探索を行う。ファージ取得後は、ゲノム解析、感染実験、性状解析、形態解析等を行っていく。ファージセラピーに向けて有用なファージが見つかった場合は、アンチセンスRNA遺伝子カセットの挿入や育種(変異)により、知財権を取得することのできる改変ファージの作成を行う。
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Causes of Carryover |
初年次は着任1年目だったため実験が思うように進まず、試薬や消耗品などの購入が少なくなった。次年度は研究を加速する予定である。
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